大行沢-樋の沢小屋-大東岳-立石沢-二口温泉(2010.9.9-10)


☆期日/山行形式: 2010年9月9-11日 単独行
                  前夜市中ホテル、山中無人小屋利用、下山後温泉泊
☆地形図(2万5千分1): 作並(仙台7号-3)、山寺(仙台11号-1)、熊ヶ根(仙台7号-1)
☆まえがき
    北蔵王と船形山塊の中間にある二口峠付近の山々を巡るため、前夜仙台泊、山中2泊の山旅を計画した。
この山域の盟主は大東岳。 標高は僅か1365.8m だが両肩を怒らせた山の姿は堂々として宮城県内第一の名山と言われる。
登降差も1000m を越すので一般とは逆に、大行沢ルートから登り、途中の樋の沢出合小屋(710)に泊まることにした。
前夜泊した仙台から入山すれば、午後早く小屋に入れるので、もしコンディションが良かったら小東峠(1005)経由、小東岳(1130.2)に登頂できる。
  二日目に樋の下大沢から弥吉ころばし(1150-1280)を登りあげて大東岳(1365.8)に登頂したあと、表ルートを下降し、鼻こすり(1150-1050)から五合目(900)、立石沢(760)を経て二口温泉(360)に下山。
登山口近くにある一軒宿 ばんじ山荘に宿泊する。
最終日は疲れがなく天気も良かったら白糸の滝から望洋台(1120)に上がり、糸岳(1227.6)に往復するか、北石橋(800)へまわり、大行沢から帰るか、と言う計画とした。

  結果的には天気が芳しくなかったり、疲れてしまったりで、大東岳に登っただけで終わったが、3年前の夏に登った面白山の頂上から雲海の上に頭を出している雄姿を見て以来、ずっと気に懸っていた二口山塊盟主の頂に上がって周囲の山々への素晴らしい展望に接し、老いてなお山に登れる幸せを噛み締めた。

大東岳頂上の展望 北から東へ  
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☆行動記録とルートの状況
9月9日(曇)
<行動時間>

    仙台[8:32]=[8:59]愛子[9:07]=(仙台市営バス)=[9:53+5]二口温泉(10:25)-大東岳登山口(10:35)-白滝(11:10)-小休止(11:25/30)-雨滝(11:33)-裏磐司展望所(11:50)-京淵沢(11:56)-ケヤキ沢(12:14)-小休止(12:35/40)-北石橋入口(12:59)-(13:20)樋の沢出合小屋{無人小屋泊}
<概要>
    早朝の東北新幹線で東京を発てば、9時前に仙山線愛子駅に着き、朝の二口温泉行きバスに間に合うのだが年相応にゆっくりした山旅をしたいと思ったので、前夜のうちに仙台まで行き、駅近くのビジネスホテルに泊まることにした。
仙台は駅中、街中にコンビにがあり、駅弁屋の店も早朝くから開いているので、小屋泊まりに必要な食料などは現地で調達できる。
  愛子駅から出たバスが町外れの高台の上の広い新興住宅街を通り抜け、後の山を越すとすぐに秋保温泉だった。
天気図では既に高気圧圏内に入っている筈だったが、長く居座っていた太平洋高気圧が置いて行った水分が雲を発生させ、山の高い所を隠していた。
秋保温泉から最上街道筋を走って名取川谷をさかのぼり、山間で人家が尽きる所が二口温泉だった。
バス停前のビジターセンターで登山者カードを提出したあと大東岳裏コースの大行沢ルートに入った。
険谷に分け入ってゆくルートは良く整備されていたが、裏磐司展望台あたりから先は霧の中だった。
沢ルートではときどきあることだが大雨などで崩壊した所を迂回するルートが設定されていて、一般に流通しているガイドマップと違っている部分があった。(詳細は 国土地理院の地形図に GPS トラックを重ね書きしたものを参照)
  午後早く小屋に着いた。
半分が土間になっている1階は水汲みやトイレの便利が良かったが薄暗く陰気だった。
2階に上がって見たら明るく清潔で居心地が良さそうだったのでこちらを居場所にした。
この小屋は飯豊の熊沢小屋と同様、山菜取りや山釣りの人達も利用するようで、数枚の布団・毛布と寝袋が2本あった。
床を掃いて掃除したあと、毛布を二つ折りにして敷き、布団を掛けたら良い寝床ができた。
ザックに入れてきた寝袋は枕に使った。

  小東岳に登って来る時間は十分あったが、県境稜線に上がっても五里霧中間違いなしと思われたので小屋の内外をブラブラして時間を過ごした。

大東岳 樋の沢出合小屋の2階  
 (画像をクリックすると拡大)
  この小屋では笹谷の小屋のように食物捜しの動物が出てくることもなく、静かな山中で熟睡した。
 
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9月10日(晴)
<行動時間>

    樋の沢出合小屋(6:50)-標高995m 地点(7:48/55)-弥吉ころばし出口(8:50/9:00)-大東岳(9:20/10:00)-鼻こすり道標(10:17)-東清水入口(10:31)-穴戸沢林道分岐(10:59)-五合目(11:05/15)-立石沢(11:45/55)-登山口(12:35)-(12:45)二口温泉{磐司山荘泊}
<概要>
    外が明るくなってひとりでに目が覚めた。
薄曇りだったがあたりは明るく、日が昇れば晴れてきそうに思えた。
樋の沢小屋からだったら大東岳は半日コースで、二口温泉に泊まるなら時間の余裕はたっぷりある。
恒例にしたがってコーヒを淹れて飲み、すっかり目が覚めたところで朝飯を食べ、ゆっくり食休みをしながらパッキングを済ませた。
頂上へは、まず小屋の下手から樋の下大沢に入って涸れ沢を登り、谷の詰めのスラブの縁の鎖場から右手の小尾根に上がって弥吉ころばしに向かった。
弥吉ころばしは標高差150m あまりの、足場の悪い急登で、ガイドブックで要注意とされている。
実態は、岳樺の森の中の浮き石が積み重なっている、丹沢あたりではありふれている程度の登りだった。
急がず休まず登り続け、ワンピッチで通過した。

  急登が終わりに近づくと次第にまわりが明るくなって行き、最後はパッとまわりが開けて低灌木に覆われた大東岳頂上肩に飛び出した。

  頭の上にはこれ以上ないと言うくらい澄み切った青空が広がり、背後を振り返ると、谷向かいに小東岳・糸岳が並び、その先には神室岳、雁戸山を経て本峰に連なる北蔵王連山。
さらに南蔵王の後烏帽子岳あたりまでの山々が連なっていた。
蔵王の右には飯豊が見える筈だったが雲の中だった。
その左手、山形盆地の上空を覆っている雲海の先に朝日連峰と月山が浮かんでいた。
70台半ば近くになって、このような山岳景観を目にすることができる幸せに感激した。

大東岳 弥吉ころばし出口の展望  
 (画像をクリックすると拡大スクロール)

  大東岳頂上部は遠くから見た通りの平坦な地形になっていて人の背丈ほどの低灌木と笹に覆われていた。
頂上に向かって進んで行く途中に凹んだ湿地があった。
湿地の先をひと登りすると石祠、三角点標石、石造りの展望盤がある頂上広場で、北から東への視界が広がり、谷向かいの面白山をはじめとするみちのくの脊梁山脈の山々が並んでいた。
視界の右端には仙台平野が広がり、仙台市街の一部が見えた。

  誰もいない頂上で長い休みをしていたら表ルートの方から熊鈴の音が聞こえてきた。
笹の間から現れた熟年ハイカーは、誰もいないと思って来た頂上に思いがけず人が居たので驚き、幾分ガッカリした様だった。
挨拶をし、少し話をしたあと頂上を明け渡すためザックを背負いあげ、下山路に入った。
表コースは1000m 超を緩やかに下って行く長いルートで、五合目までは尾根の背だったが樹木が繁茂し、展望は得られなかった。
特に注意を要するような所もなく、のんびり歩き続けて沢沿いに下り、3、4度の渡渉を経て登山口に戻った。
登路にした場合、展望に恵まれない長い登りはやや単調かも、と思った。

  昼時に二口温泉に降り着いた。
ひと風呂浴びたとしても十分午後の愛子行きバスに間に合う時間だったがこんな山奥の一軒宿に泊まる機会は滅多にない。
ここで宿泊すれば、次ぎの日に状態が良かったら糸岳に登れるチャンスもキープできる。

  部屋の準備ができるのを待つ時間に食べたざる蕎麦が美味しかった。
蕎麦が腹に落ち着いた頃、部屋が決まったのでザックを運び込み、中から着替えを引っ張り出して温泉に行った。
ほどほどの浴槽にかけ流しの温泉はとても良い湯だった。
汗を流し、さっぱりして部屋に戻り、暫らく休んだ。
一階の一番奥の角で風通しが良く、夏戻りした日の昼過ぎに湯あがりの身体のほてりを取るには最適だった。
3時を過ぎてやや涼しくなったので道向かいのビジター・センターを覗きに行ってみた。
二口峠付近の自然・歴史の分かりやすい展示があって、この一帯の地形は火山活動によって形成されたことを学んだ。
  定時のビデオショーが上演されなかったので建物の外に出て、自販機から買った缶コーヒを飲んだ。
建物の蔭に座ってコーヒを飲みながら空を見上げるとアキアカネが沢山飛び回っていた。
いつになったら夏が終わるのか、と思うほど暑い日が続いているが季節は確実に進んでいる!
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☆GPS トラックとスライドショー




大東岳の GPS 軌跡アルバム


Flickr の元画像スライドショー


詳細ルートマップ(1/12500)

 
☆おわりに
    二口温泉に泊まった翌日は太平洋高気圧が復活して蒸し暑い夏日になり、いつ俄か雨が降ってきてもおかしくない雲行きになった。
大東岳の疲れも感じていたので山は止め、秋保の大滝と植物園を見ただけで帰ることにした。
午後、山寺まで行って芭蕉の句で知られる寺を参拝する考えもあったがあまりの蒸し暑さで、その気になれなかった。
結局、3泊4日もの時間を掛けたのに登ったのは大東岳ひとつだけ、と言う超低効率山行になったのだが、長く気に懸っていた大東岳に登頂し、素晴らしい展望を楽んだ。

  笹谷峠から二口峠を経て権現様峠あたりまでの県境稜線上の山々、糸岳・小東岳・南面白山などが未踏のまま残ったが、この山域の状況が頭に入り、今後の山行計画が容易になった。
機会を見つけて県境稜線トレースをおこない、その際に登頂したい、と思っている。

  いずれにしてもこの夏は、神室岳と大東岳と、蔵王北方稜線上の個性派ピークふたつに登れ、それなりに満足できた。

  なおこの夏、下肢痙攣対策で色々工夫し、それなりの効果が得られ、行動中に痙攣が起きる問題はほぼ解消している。
樋の沢小屋に入ったのは、この夏では稀な涼しい日の昼過ぎだった。
小屋に落ち着いて暫らく経ち、身体が冷えてきた時に軽い痙攣が起こり始めた。
最初に芍薬甘草湯を試してみたがほとんど効目かなかったので、次に "新兵器" のミオナールを追加した。
こちらは効果があって痙攣を抑制できたのだがやや不安定な所があり、ちょっとした加減で引き攣りそうになる状態が続いた。
ほかに誰もいないのを幸い、ときどき小屋の中を歩きまわって筋肉を解していたのだが、夕暮れ時の食事で、仙台駅で買ってきた弁当を腹いっぱい食べたらそのあと暫らくしてスカッと治ってしまった。
血中糖度か、あるいはなにかのイオンが低下していたのが食事をしたことで回復したのかなぁ、と思っている。