昔のLPレコードを音楽CDに (2004.2.25/3.16/9.18)

◆ LPレコードには昔の思い出が詰まっている

  LPレコードのCD化にやっと手が着きました。
高度成長の只中で新しい物造りに励み、多忙な毎日を送っている中で、貴重なリラックスタイムを与えてくれた円盤達です。
一時期でしたが、小遣いのかなりの部分を注ぎ込んで買い集めていたことがあり、800枚程が溜まっていました。
  これらのLPのレスキューは、引退したらやりたいと思っていた大口の宿題のひとつだったのですが、思惑と違って期待したほど時間が空かなかったため、手が着かないままになっていました。
  幸いか不幸か、年のせいで厳冬期には大きな山に泊りがけで行く元気がなくなり、近くの低山への日帰りばかりをするようになりました。
気分的にやや手持ち無沙汰になるとともに、チョッピリながら時間と資金の余裕ができ、長年の宿題に手を着けられる状況が生まれたと言う訳です。

  あらためて調べてみると、オーディオのディジタル化は、Windows98 から Me に移り変わる前後の時期にハード/ソフトがほぼ出揃い、今では技術的にすっかり落ち着いた領域となっている事が分かりました。
アナログ機器(レコードプレイヤーやプリアンプ)がまともに動いている状態だったら、ちょっとした資金と手間を投入するだけで段取りができそうです。
  大きなスピーカやメインアンプは整理してしまいましたが、レコードプレイヤーとプリアンプなど、必要な機器は、何とか動く状態をまだ保っています。
  パソコンは、PentiumV 800MHz CPU と386Mbyte のメモリーを持つ自作 Windows Me 機で充分間に合いそうな事も確認できました。
  もうひとつ、このプロジェクトの鍵を握る機器は、"オーディオプロセッサー" と呼ばれるアナログ-ディジタル変換ユニットです。
これは、LPレコードのアナログ音をデジタル信号に変換するユニットで、CD化の音質をもろに左右しますから、適正な機種を選定する事がとても重要だと思いました。
どんな機種があってそれぞれどう評価され、どれが広く使われているか、今時、この手の情報収集はインターネットが一番早くて正確です。
  関連事項も含めてさまざまな情報が半日も掛からずに集まり、これはと思われる2、3の機種を候補に決めました。
さらに、ついでのときにお店に立ち寄って現物を見たり実勢価格を調べたりしたあと、最終的にはこれだと言う物を秋葉原のお店に通販で注文して取り寄せました。

◆ LPの音楽CD化のハード

    ハードウエアの構成は割に単純です。
下の図の様に、これまで動いていたアナログステレオシステムのプリアンプとアクティブスピーカの間にオーディオプロセッサを挿入し、これとパソコンをUSBケーブルで繋ぐだけです。
  オーディオプロセッサーは、録音時にはアナログステレオ信号をディジタル信号に、再生時にはハードディスクから読み出したデジタル信号をアナログステレオ信号に、変換します。
  パソコンはオーディオプロセッサーの制御を行なうとともに、オーディオプロセッサーがデジタル変換したステレオ信号をハードディスクに書き込み、あるいは読み出すデジタル録音機として働きます。
また、パソコンは、ノイズの軽減や音色の改善など、ディジタル化されたサウンドファイルに対するさまざまな処理を行なうツールにもなります。

主な機器の仕様は概略下記の通りです

(1)ターンテーブル(Technics SL-1300 + Denon DL-301 MCカートリッジ)
(2)ヘッドアンプ(MCカートリッジの微小出力を約10倍にする自作低雑音増幅器)
(3)プリアンプ(レコード/CD/ラジオの入力装置の切り換えや音量調節をする自作FET増幅器)
(4)サウンドブラスター Audigy2 NX USB オーデオプロセッサー(下右の写真)
*(5)自作PC(PentuimV 800MHz CPU+386Mbyte Memory +LG GSA-4081B CD/DVDドライブ)
(6)ONKYO GX-D90(Y) パワード スピーカ システム数年前に廃棄したIBMデスクトップ機に付いていたアクティブスピーカ

* 半年あまりこのPCを使いましたが性能的に少々苦しいのが分かってきたので新オーディオ/ビデオ用PCを自作してそちらに乗り換えました詳しくは "オーディオ/ビデオ用PCの自作" のページをご覧下さい。(2004/9/18)

左下の写真には (1)、(2) および (3) が写っています。
  (2) が分かり難いのですがターンテーブルの左横にチョッと覗いている緑色の箱がそれです。 低雑音トランジスタ1段の小さな増幅器なのに 100x75x300mm という大きな物で、特に奥行きが異常に深いのは、交流電源からのノイズを徹底的に除去するための部品とその配置の関係で、電源部が容積の80%程も占めているからです。
  銀色のパネルにつまみが並んでいるのがプリアンプです。
25年程前に関係していたメカトロ機器の開発でアナログ電子回路を勉強したことがあって、その学習成果の確認も含めてゼロから設計製作しました。 世界中に一台しかないオールFET増幅回路構成の純正手造り高性能プリアンプです。
  ターンテーブルはもともと割に良い物だったのですが大分老化が進んで回転数セレクターを45rpm にしないと33 1/3rpm で回れない(?) と言う妙な状態になっています。
愛着もあるしそれなりに安定して回ってくれているので、マァ良いかッ、と思って買い換えるのを控えています。
  プリアンプの手前に写っている円盤状の物は MP3 形式音楽CDのプレイができるディジタルディスクマンです。
古いディスクマンは、MP3 どころかパソコンで焼いた CD-DA ファイルさえ認識できないこともあるのが分かり、急遽買い換えました。 10年ほど前に買った先代とほぼ同じ値段ですが音質・耐震性とも、格段に向上していて最近の技術進歩を実感しました。

  下が Creative社の Sound Blaster Audigy2NX USB オーディオプロセッサです。
A/D変換性能は 24Bit 96KHz S/N比102db の性能があります。 
後述の様にバンドルソフトが走らないため、一部機能が使えないのですが、ボリュームコントロールやミューティングなど、基本的な機能はリモコンで操作できます。
  このオーディオプロセッサは、DVD オーディオに対応でき、5.1ch、7.1ch ステレオスピーカシステムを接続する事もできますが今のところは、シンプルな2chステレオにしています。
録音条件の設定は、24bit/96KHz の変換性能を目一杯使って Wave 形式のデジタルサウンドファイルに変換して取り込み、256kbps-44.1KHz でステレオMP3ファイルに圧縮してハードディスクに記録します。

  アクティブスピーカは、以前使っていたIBM デスクトップ機に付いていた物で間に合わせていたのですが、まわりの機器に比べるとあまりに貧弱です。
  音の良いアクティブスピーカ探し回った結果、Bang & Olfusen 社の BeoLab 4000 と言うアクティブスピーカが良さそうだと言う事が分かりました。
 早速現物を確かめにショウルームを兼ねたお店に行って見ました。 曲面を組み合わせ、魚の胴体を輪切りにしたような形のアルミダイカスト製ボックスからでてくる伸びやかな中高音は、好みの小編成クラシックに最適で、たちまち惚れこんだのですが、値段の方も相応に立派で、最新のフルサイズノートパソコンを買ってもまだお釣りが来るほどです。
おいそれと手が出ないので、資金の工面ができるまでの間、もっと手軽なスピーカでつなぎをすることにしました。
  今、パソコンショップに行くと、さまざまな小形アクティブスピーカが、マルチメディア用として棚に並んでいます。
簡単に聞き比べができるようにしてあるところが多いのでいろいろ試してみると、結構良い音を出すものもある事が分かりました。
  カタログ仕様と現物の音と両方から絞ってゆき、最終的には ONKYO の GX-D90 型パワード スピーカーを選びました(左)。
  ほかの類似製品に比べて中高音域が素直に伸びている感じがしたのと、デジタル光入力および、24bit/96KHz DAC を備え、DVD-Audio に適応できるという仕様なのに値段は B&O の10分の1以下。 普段の小遣いでも間に合う範囲です。
  ついでの時にショップに立ち寄って購入して持ち帰り、早速 "入れ換え工事" をしたあと音出しをしました。(12004.4.24)

12x23x18 cm と言うミニサイズだし、チャンネルあたり15watt と言うささやかな出力ですから、低音域には期待していなかったのですが、実際に据付て鳴らしてみると柄に似合わないシッカリした低音を響かせたのに驚きました。
  小形スピーカの低音域性能の向上は主に磁石技術の進歩のおかげだと思うのですが、大変な性能向上です。
  逆に、DVDオーディオ対応で、100KHz まで伸びていると言う高音域は、20KHz までしか入っていない音楽CDを老化した耳で聞いても殆ど効果が感じられず、僅かに高音質録音のLP再生の時に、そうかな、と思う程度です。

  とにもかくにも、ほんのつなぎの積りで購入したスピーカで、驚くほどの音質改善が出来たのは嬉しい誤算でした。

◆ LPを音楽CD化するためのソフト

  "マイコンもソフトなければただの箱" という古い諺がありますが、オーディオプロセッサーもソフトがなければ何もできません。 最低限、デバイスドライバーと録音再生ソフトが不可欠です。
  デバドラの方は普通のパソコン周辺機器と同じで、品物の箱に同梱されてきた物をインストールしました。
  このオーディオプロセッサーにはさまざまな魅力のあるバンドルソフトが付いて来たのですがどうもPCとの相性が悪かったようで、インストールはなんとかできたものの、録音再生プログラムを始めとして大部分のソフトでハングアップが頻発して使い物になりませんでした。 念のため、いったん全部をアンインストールし、もう一度インストールし直してみたのですがやっぱりだめでした。
  デバイスドライバーで親機のパソコンがオーディオプロセッサーを認識してくれても録音/再生ソフトソフトが走ってくれないことにはLPレコードのデジタル録音ができません。
計画挫折の憂き目に遭わないためには、ここが頑張り所でした。

(1) 録音/再生ソフト

  このような事態になるだろうと予想はしていなかったのですが、手始めのインターネット検索で、TDK社から出ている "MP3 Audio Magic Professional" と言う録音/再生ソフトの評判が好いらしい事を知りました。
  冠してある名の通り、ミュージックファイルをMP3形式に圧縮録音できると言うのに魅力を感じました。
ついでの時にソフトショップに立ち寄り、現物をチェックしてみたらそれ程高価ではなかったのでなかば興味本位で買って帰っていました。

  バンドルソフトは駄目だったがこちらならサードパーティのソフトだから、オーディオプロセッサーの機種に関わらず、一般的なDOS/V系パソコンとの整合性が良いに違いないと思ってインストールしてみたらスンナリ進行し、スムースに立ち上がってくれました。
テストの積りでチョッと動かしてみたら、非常に安定して動作します。

 左が実行中の Audio Magic のウインドウです。

演奏モードになっているのですが、ウインドウの左側に並んでいるアルバムのどれかを選ぶと、右側にその中に納められた MP3 ファイルの演奏リストが表示されます。

  曲目の追加削除、順番の変更など、演奏リストは自由に編集できるので何枚ものレコードの録音ファイルを適宜組み合わせ、自分なりの "何とか全集" とかいう感じのアルバムが作れます。

  簡単操作のソフトですがその割にはちょっとマニア好みなところもあって音楽ファイルの演奏中には、右下の小窓にFFTダイヤグラム(周波数分布図)が表示されたり、CDでカットオフされてしまう16KHz 以上を補充する "Supurime" 機能などが組み込まれていたりで、マニア好みの仕立てになっている所もあります。

  左は録音モードでLPレコードを録音している最中の画面です。

  ライン入力は最大音量にセットし、256kbps 44KHz でステレオ録音したサウンドデータを、MP3 圧縮ファイルにしてハードディスクに記録します。

  アナログ機器から出てくる定常的な雑音を学習してキャンセルする機能が備わっているせいで、暫く使っているうちにハムやホワイトノイズがほとんど聞こえないようになりました。

  Audio Magic は全体として良く練れたソフトで安定性も高く、気に入って使っているのですが、暫くすると一、二の問題が出てきました。

  まず、"ノイズ除去" 機能です。
昔、カートリッジの針を引っ掛けてできてしまった傷から出る "バチ-ン、バチーン" と言う周期雑音の軽減ができるのではないかと、大きな期待を掛けていた機能だったのですが、なにやら "虫" が住んでいるようで、エラーで落ちてばかりで20回のうち1回位しか最後まで走ってくれません。
  これには困ったので、詳しく症状を調べた上でTDK社のサポート窓口に電話しました。
感じの良い女性が応対してくれたのですが、状況を説明した上で対策を尋ねると、"そのようなトラブルを聞いたのは初めてで、今の所は対策がありません" と言う返答にガックリ。
ノイズリダクションに関してはお手上げになってしまいました。

  ただ不幸中の幸いだったのは、レコード集めの末期の1970年代には、いくらかは懐の余裕ができて一度に何枚ものLPを買えるようになったのと裏腹に、仕事が忙しく、一、二度針を通しただけで棚に仕舞ったままとなり、音溝が殆ど傷んでいないのが多いということでした。

  またその頃には、CDの台頭に対抗して新技術を応用した高音質のハイファイ(HiFi)録音盤が各社からリリースされました。 それらのLPは今聴いてもCDを凌駕する音質を持っています。

  問題のふたつ目は次のようなことでした。
(2) サウンドファイルを切ったり繋いだりしたい
    LPレコードは片面の演奏時間が30分足らずのため、両面に跨って納められている曲があります。
表裏に分かれている曲をひとつに繋げたり、レコード再生に付き物の雑音が入ってしまうファイルの両端数秒分を切り取ったりしたくなりました。

  Audio Magic の "曲結合" 機能は良くできていて何の問題もなく利用できるのですが "曲分解" 機能の方は、少々使いにくいと感じました。
設定されたレベル以下の無音状態が一定秒数続く個所で画一的にファイルを切り分けるなど、簡単操作を基本とする仕立てになっているので、対象がポピュラーミュージックだったら便利に使えるのでしょうが、クラシック音楽ではそれ程細かく切り分ける必要はない代わりに、曲の切れ目と楽章の切れ目を識別し、必要な所だけを切り離したいのです。

  幸いなことに、あらかたは使い物にならなかったオーディオプロセッサーバンドルソフトのうちで、"Creative Wave Studio" と言うサウンドファイル操作プログラムだけは、何とか走ってくれる事がわかりました。

  このソフトでサウンドファイルを開くと、左の様にステレオ両チャンネルの波形が表示されます。
  カーソルを動かして任意の場所を選び、その部分だけを試聴して確認した上で切り取ったり、切り離したりすることができます。

  またウインドウの右端にはレベルメータが表示されます。
これを見ながら試聴し、サウンドファイルの音量レベルを加減する事も可能です。
  上の画面はハープ独奏小曲集の中ほどの一曲を選択反転した状態を示しています。
編集コマンドでコピー/ペーストができるので、この機能を利用して愛聴盤のひとつから1分20秒ほどのトランペット小曲を切り出しました。
  曲は、バッハの組曲2番、バディネリです。
MP3 形式のデジタルファイルとしてセーブしてあるので、そのプレーヤーが組み込まれていればダブルクリックするだけでお聴きになれる筈です。
ウイルスの警告が出る事があるかもしれませんが35年ほど昔のLPレコードから抜き出したままですから大丈夫です。
ほとんど雑音もなく、奇麗な音でパソコンに取り込めていることをお分かり頂けるのではないかと思います。
(3) ノイズ除去も何とかしたい
  ここまで来るとあらためてノイズ除去の問題を何とかしたいなぁ、と思う様になりました。
好きで良く聴いていたレコードほど傷みがひどくてノイズが多いのでなおさらです。
LPレコードにつき物の "パチパチ、プツプツ" という雑音もさることながら、昔、手許を誤ってカートリッジの針を引っ掛けしまったためにできた、"パチーン、パチーン" と言う周期的な雑音だけでも軽減できれば "御の字" だと思いました。

  あらためてインターネットで検索をしてみたらいろいろ情報が集まってきました。
コマーシャルベースのソフトとしては
米国ミネソタ州のソフトハウスが出している "DART" と言うプログラムの評判が高い事が分かりました。 "DART" とは、Degital Audio Restoration Tools ということのようです。
またLinux 用アプリをルーツとする "Audacity" と言うマルチOSフリーウエアは、各種のプラグインを組み合わせることで拡張が可能な高機能ソフトであることも分かりました。

(注)  DARTの情報は、http://www.dartpro.com/
Audacity の情報は、http://audacity.sourceforge.net/  にあります。
◇ DART XP をインターネットで取り寄せ

    折角の "文化遺産の修復" に使うのだから、チョッとお金が掛かるが、一番キャリアが長いと思われる "DART" を使ってみようと思いました。
  発売元のホームページに行って見たら、ふた種類のランクがあってフルセット版の DART Professional はリアルタイム処理機能を備え、ノイズリダクションをしながら録音を行なえるほど高機ですが$400もします。 年寄りの玩具としてはチョッと手を出しかねます。
  サブセット版の "DART XP" の方は、リアルタイム処理機能ができませんが、$99.95(+税金&送料等)という手頃な価格で、こちらなら手が届きそうだという事が分かりました。

  早速、サポートメーリングリストに加入し、過去メールを眺めてみるとかなりの効き目がありそうな雰囲気のやり取りが並んでいます。
  また、米国でも大勢の人達がLPや磁気テープのパソコン取り込みをやっていることが分かりました。
  多数のユーザを抱えているソフトだから間違いはなさそうだなと判断したので、早速ホームページのメールオーダーセクションに注文を入れました。



  10日あまりでプログラム CD-ROM が送られてきました。
封筒から出てきたケースのカバーは左のようなものでした。


  この写真の左下の方に見えるように、
・高品質オーディオの録音と修復
・信号処理と編集
・リアルタイムプレビュー
・オーディオファイルをプレイリストに整理
・標準的なオーディオCDの焼き付け、
と、5項目の主機能が列記されています。

  さらにその下には、この新バージョンのために再設計したツールとして、
・クリック除去プラス
・ヒスノイズ除去プラスFFT/AR
・ノイズ除去プラスFFT/AR
・ボーカル除去、
と言う4項目のリストがあります。

  この中で、私が特に欲しかったのは、 "クリック除去" ツールです。

  早速インストールをするとデスクトップに "DART XP" というのと "CD-Recorder 4 Basic" と言うふたつのアイコンが表示されました。



  左が DART XP のウインドウです。
  このプログラムは "WAV" 形式のデータしか扱えないのでページの上の方で説明した "Creative Wave Studio" を使って MP3 から WAV に変換したものを読み込ませました。

 縮小してあるので分かり難いかもしれませんがツールバーの右よりに、4種類のノイズ除去ツールのアイコンが並んでいます。

メインウインドウは、上下3段に区分され、一番上が処理を行なう前のステレオサウンドファイル、2段目に処理後のファイルのサウンド波形が表示されています。


   "クリック音除去" アイコンをダブルクリックすると左のようなファイル名や処理パラメータなどを設定するメニューボックスが表示されます。

  初めてで何も分からなかったので、とりあえずファイル名だけ設定し、それ以外は、すべてデフォールト値で実行して見る事にしました。

  昔、カートリッジの針を引っ掛けたため、一回転ごとに "ブツーン" 、 "ブツーン" と、ひどい雑音が出るレコードから取り出したファイルを読み込み、問題の部分を表示させると左の様に大きなノイズ波形が見えました。
特に左チャンネルの傷み方がひどいようです。

  ここで、"DeClick" コマンドを叩き、選択した範囲に対する処理を実行すると、処理結果が下の段に表示されました。

  目で見た所では奇麗にノイズ波形が無くなっています。

  "シメタッ" とばかり、選択した部分だけをプレーしてみたら効果は覿面で、僅かに "プツン、プツン" という音が残ってはいますが、処理前のように聞くに堪えないひどい状態ではなくなりました。

◆ まとめ

  1月の下旬からこれまで、少々の小遣いとかなりの時間を費やした結果、LPレコードの音をパソコンに取り込み、必要に応じて曲の切り貼りをしたり、雑音の除去や音質の改善をした上で、CDに書き込むまでの一連の操作ができるようになりました。
最初のテストケースとしてクラシックを主体に20枚ほどのLPレコードを録音し、その一部で自称: "クラシックハープ音楽全集[1]" を試作してみました。
出来上がったCDから出てくる音は期待以上で、年のせいで聴覚の音域が狭まっている耳には、原盤とまったく遜色のない、ハイファイ音に聞こえます。

  雑音除去処理と周波数特性補償とのお蔭か、元のLPより静かでクリヤなハイファイ音になったように感じられる場合さえあります。
  音楽CDでは16KHz 以上がカットオフされてしまいますが、LPの後期に出た一部の高音質レコードをハイリソリューションでデジタル化すると、仄かな音のニュアンスまで写し取れるように思えます。

  また録音したサウンドファイルをMP3形式で圧縮すると、CD一枚あたりの演奏時間が少なくとも5倍以上になります。
700Mbyte CDの演奏時間は非圧縮で80分ですが、その5倍と言うことは6時間半あまりになると言うことです。 30cm LPが7枚も楽に納まってしまうのでお気に入りの音楽を朝から夕方まで流しっぱなしにできるCDが作れます。

  と言う次第で、春山シーズンで忙しくなる前にパソコンのオーディオ化がひと通り完成。
予想以上に良い音質が得られて大成功でした。


[ここからあとはオマケです]

◇ 奇麗な音楽CDを作る

   折角CDを作るのだから、見た目も奇麗にしたいと思いました。
LPレコードのジャケットにはなかなかデザインの美しい物があります。
これらを生かせればCDケースのカバーを奇麗にしたり、オリジナルLPの雰囲気を伝えるCDラベルができるのではないかと考えました。

下はその実例です。

  左はかつての愛聴盤: モーリス アンドレの "ポップ バロック トランペット(ERATO ERA2077)"  のCDです。
元のLPのジャケットが奇麗だったのでそれをスキャナーで取り込み、CDラベルにダイレクト印刷しました。

  右は往年の大セロ奏者: パブロ カザルスのジャケットをコピーして作ったCDケースのカバーです。
このLPは、1960-70年代のLP全盛時代にビクターから出た(SP盤からの?)復刻版で、歴史的な価値もあるのではないかと思っています(Victor RA-2197)




◇ これからの楽しみ

・これから暇を見つけてはLPのデジタル変換を行いコンテンツの蓄積を進めて行く訳ですが、こればっかりは掛けた時間の分だけしか進みません。
ある先輩に "それって加速して倍速とかではやれないの?" と聞かれました。
チョッと考えてみましたが、現行のターンテーブルとアナログ回路の原理から離れられない限りなかなか大変で、膨大な資金を投入しても、どうかなと言う程度の難題です。
今から取り組んでも、技術が完成する前にこちらの人生が "完成" してしまうおそれが大です。

  本題に戻ると、LP1枚の演奏時間は約50分ですから、試聴、録音、確認と最低その3倍プラスアルファの時間が必要です。 仮に800枚のLPがあるとすれば、2400時間程も必要だという計算になります。
山歩きで忙しいくなる季節が長いですからこれから何年にもわたって楽しめる(と言うか苦しむと言うか)ことができそうです。


モーツアルトの交響曲40番と交響曲41番ジュピターのレコードは、何枚も持っているくせに、これはというのがない事が分かったので久し振りにレコードショップに行って見ました。
半日掛けて神田/御茶ノ水界隈と新宿にある数軒をまわって見たのですが、大抵の店は、新品のCDと中古のCD/LD/LPを置いていて、結構人が入り、盛況でした。

  面白かったのは中古LPの値段の付けかたでした。 どうやら供給が需要を上回っているようで、ごく少数の著名な決定版にはとんでもない値段がついている一方で、それ以外には "こんなので良いの?" と聞きたくなるような値札が付いていました。特に海外盤の値段が安いのが目立ちました。
  結局、ジュピターは名盤のひとつに数えられているCDを購入したついでに、たった700円のラベルがついていた、カール ベーム指揮ベルリンフィルの後期交響曲集箱入り3枚組LPを買って帰りました。 家に持ち帰ったあとこのLPをあらため調べてみたら、ほとんど傷んでいない新品同様の状態だと言う事が分かりました。

 最初から掘り出し物にあたるという幸運にめぐりあったせいで、ウン十年ぶりにLP集めに火がつき、時どき中古レコード漁りをするようになっていますが、掘り出し物はその後も頻々と見つかっていて、人生の楽しみがまたひとつ増えました。


・大体纏まりがついた、デジタルオーディオシステムの上流側に比べて格段に劣っていた下流の音出し系が間に合わせの積りで導入したアクティブスピーカの、意外な高音質のお蔭で大いに改善され、ひと息ついている所です。
  さらなる改善を狙って、B&O アクティブスピーカの入手に努めるか、パワーアンプを何とかして昔愛用していてまだ温存しているダイヤトーンの4way ブックシェルフスピーカを復活させるか、次のインドアシーズンが来るまでのお楽しみです。

  お金を注ぎ込んでブランド物アンプを入手するのも楽で良いのですが、昔取った杵柄で、一丁自作してみようかと言う気もしないでもありません。
最新の  中国、東欧などでは、今でも "球" の生産が続けられていて、ちょっとした真空管アンプ ブームになっており、秋葉に行けば必要な部品は全て手に入れられるようです。
 ソリッドステートでやるならD級アンプ用のICが出ているので、これを使って高効率なデジタルアンプを組み立ててみるという事も考えられます。


・ そのほか、SACD(スーパーオーディオCD)、DVDオーディオを再生するためのプレイヤーを導入して音源サイドを補強、オーディオプロセッサーの性能を生かして5.1チャンネルシステムを構築など、ハードまわりにも遊びネタはいくらでもあります。

                                        ぺージの先頭へ              Top Page へ