元伊勢、大宇陀・室生寺参詣古道・伊勢本街道 (2015.6.9-11)


☆期日/山行形式: 2015年6月9日-11日 温泉宿泊所利用2泊3日 寺社巡りと古道ウオーク
☆まえがき
    毎年の春秋の恒例になっている年寄りグループの古道ウオークで、大和と伊勢の境、元伊勢地方と呼ばれている榛原駅付近の史跡・寺社、旧参詣道・街道を訪ねる2泊3日の徒歩旅行をしました。
年をとるに連れてメンバーに様々な差し障りが出てくるようなっていて、今回の参加者は総勢5人に止まりましたがこの時期としては例外的な好天に恵まれ、大和と伊勢の境の古い歴史の探訪を楽しみました。

☆行程概要マップ

左ダブルクリックで縮尺を拡大、右で縮小します。
マーカをクリックするとその地点の情報や写真を表示。
右上の "□" マークをクリックすると拡大表示になります。



☆6月9日: 大宇陀 万葉の阿騎野コース(曇り一時小雨)
<2万5千分1地形図>
古市場(和歌山2号-1)
<行動時間>
    宮崎台[7:10]=(東急線)=あざみ野=(市営地下市鉄)=[7:38]新横浜[7:52]=(ヒカリ503号)=[10:11]京都[10:50]=(近鉄特急)=[11:39]大和八木[11:42]=(近鉄特急)=[11:53]榛原[12:11]=(奈良交通バス 430円)=[12:31-4]大宇陀道の駅/昼食/(13:00)-森野旧薬園(13:14/38)-松山西口関門(14:00/03)-徳源寺(14:19/23)-庚申塔入口(14:42)-川沿いの道(14:50/55)-阿紀神社(15:00/05)-阿騎野人麻呂公園(15:16/38)-(15:48)大宇陀道の駅[15:55]=(奈良交通バス 430円)=[16:14]榛原駅=(Taxi 6分 720円)=みはる温泉美榛苑{泊}

<ルートの概要>
  初日は足慣らしを兼ねて大宇陀の歴史散策を行いました。
大宇陀は、古代には 「ひむかしの のにかぎろひの たつみえて かへりみすれば つきかたぶきぬ」 という万葉歌所縁の阿騎野として、中世には町の東側にある山の上に築かれた松山城の城下町として、近世には吉野への玄関口として多くの旅人が往来して繁栄、吉野葛の集散地としても広く知られた歴史タウンです。

  榛原からの路線バスが着いた道の駅の食堂で地元食材のにゅーめん御膳を食べたあと国道を横切って橋を渡ると、かつての伊勢本街道筋の道がありました。
狭い道の両側に蔵造り格子戸の家並みが続いていて、100年ほども昔にタイムスリップしたか、と錯覚するような雰囲気が漂っています。

  森野旧薬園は今もって営業を続けている元祖吉野葛の老舗が経営していた薬用植物園です。
入口は、大きな蔵造りの主屋の一角を占めている吉野葛の店で、入園料を払ったあと店の中を通り抜けて中に入りました。

  主屋の裏側は葛粉製造所になっていて、葛根から葛粉を抽出精製するための巨大な長円形の水槽がありました。

(クリックすると拡大)

  水槽の背後にある庵の脇の門を潜ってひと登りすると背後に視界が開け、葛粉製造所の先の方に大宇陀の家並みが連なり、その先のほうに飛鳥との境の山並みが連なっているのが見えました。

  ひと登りした所は台地の上で、さまざまな薬用植物がところ狭しと植え込まれ、さながら博物館の様になっていました。
  薬草園の傍らに生薬倉庫と作業小屋が隣り合って建てられ、江戸時代の医薬製造の有り様を偲ばせてくれます。

  山を下ってもとの街道筋に戻り、暫く歩いた所で左折して西に向かうと鍵の手に折れた道の先に旧松山城西関門がありました。

  門を潜るとすぐ宇田川で、橋を渡った先をさらに西に進んで行くと山裾のT字路に突き当たりました。

  右折して僅か進んだ所から左手に入り、急な石段を登った所に徳源寺がありました。
織田信雄の墓所で、織田松山藩主四代の五輪塔が残されている寺ですが、お寺らしくない本堂で、普通の民家のような造りでした。

  山裾の道に戻って南に向かい、左手に棚田を見下ろしながら坂を登って行った所で左折。
庚申塔と祠が並んでいる先の切通しから坂を下り、寺の脇を通り過ぎると川縁の道に突き当りました。

  左右どちらへ進めば良いのか迷ったので近くの民家に立ち寄って道を尋ね、右手の橋を渡って坂を登ると右側に阿紀神社の鳥居が立っていました。
  由緒の古い堂々とした神社で、川の流れで身を清める禊場があるところは、伊勢神宮や瀧原宮と同じでした。 
  阿紀神社の鳥居を出た所から右手へ坂を登ると新しい住宅が並んでいて、その脇の道端に道標が立っていました。

  東に向かって台地の上の畑の中を進んでゆくと大きな白い丸屋根が近づいてきて、やがて広々した草原の園地に着きました。
左手に石彫りの柿本人麻呂騎馬像が立ち、その先には掘っ建て式の古墳復元住居がありました。

  遊歩道の脇に野外ベンチが並んでいたので大宇陀松月堂で買った銘菓 「きみごろも」 と持参していた駄菓子を食べながらこの日最後の休憩をしたあと、大宇陀道の駅に戻り、路線バスに乗って榛原駅に帰りました。
<初日のまとめ>
  梅雨時にもかかわらず、この日に半日ウオークは短時間の霧雨にあっただけで済みました。
今回の泊まり場は榛原 みはる温泉の美榛苑という温泉保養施設でした。
駅から 2Km 足らずの高台上に榛原市が掘削した深井戸から汲み上げている温泉で、このあたりに珍しいアルカリ泉だそうです。
  公営の時は赤字垂れ流しで困っていたのを全国ネットの保養所会社の運営に委ねたところ人気が高まり、今はかなり繁盛している様でした。
このあたりは東日本のように温泉が多くありません。
リーズナブルな料金で設備もソコソコ、客あしらいが良くて居心地が良ければ客を呼ぶのは割りと容易かも、と思いました。

☆6月10日: 吉祥龍穴、室生寺から大師の道を経て花の郷滝谷へ(晴のち曇)
<2万5千分1地形図>    
大和大野(伊勢13号-4)

<行動時間>
    宿舎[8:30]=(TX 720円)=[8:40]榛原[8:57]=(五十鈴川行快速 260円)=[9:03]室生口大野[9:20]=(奈良交通バス 430円)=[9:34-2]室生寺バス停(9:34)-龍穴神社(9:49/56)-吉祥龍穴(10:20/28)-不二の神木(10:53/59)-室生寺入口(11:14)-金堂(11:23/29)-奥の院(11:52/12:01)-門前橋本屋(12:27/13:15)-大師の道入口(13:41/ルートミス/14:12)-小峠の祠(14:28/34)-旧茶屋跡(14:49/54)-製材所脇道路(15:08)-車道横断(15:16)-花菖蒲園入口(15:40)-園内東屋(15:42/16:16)-(16:26)花菖蒲園バス停[16:30]=(臨時運行バス 230円)=[16:36+5]三本松駅[16:50]=(260円)=[16:59]榛原[17:10]=(送迎バス)=[17:16]美榛苑{泊}

<ルートの概要>
  2泊3日の旅の中日は丸一日の時間が使え、ロングルートをカバーできます。
幸いにも、頭の上に青空が広がり、さわやかな風が吹き渡る最高の日和となりました。

  吉祥龍穴、室生寺から滝谷しょうぶ園へのルートは大師の道と呼ばれている旧参詣道です。
寺の方から三本松に向かって逆向きに歩く者がいることを想定していないのか、室生寺前バス停から約1.5Km の鬼の足跡入口付近にある指導標の指示が反対向きだったりしたのが原因で30分ほどタイムロスをしました。

  ルートをリカバーして、鬼の足跡付近の急登を抜けると祠のある小峠に着き、そこから先は、旧茶屋の跡、息つぎの井戸跡を経て砥取に出るあたりまで良い道が続きます。
かつて多くの男女が歩いたであろう室生寺参詣道の名残をとどめている好ルートでした。

  砥取の山畑に出るところに鹿柵がありました。
獣よけの柵の戸は通ったら必ず閉めるのが山の作法です。
ここではドアに大きな掲示板まで取付けてあるのに、それでも開けっ放しになっていました。

滝谷しょうぶ園では菖蒲が咲き揃いかかっている所で綺麗でした。
東屋に入ってささやかなお茶会をやりました。
<ルートの詳細>
  ルートの詳細は、GPS軌跡、要所の写真などを取りまとめ、「ヤマレコ」 の山行記録として公開してあるのでそちらをご覧ください。




  ヤマレコの山行記録



<二日目のまとめ>
  好天のもと、原始自然信仰の跡を止める吉祥龍穴、女人高野と言い条意外に険しい山中にある室生寺、弘法大師が歩いたという女人高野の旧参詣道、そして里山の谷間に開かれた花菖蒲園を訪ね、充実した1日を過ごしました。

  室生寺金堂がご開帳になっていて、本尊釈迦牟尼像ほかの仏像、その背後にある曼荼羅を拝観できたのは幸運でした。
  滝谷しょうぶ園と三本松の間に季節運行のバスが運行されていました。
お陰で、大師の道入口付近の道迷いで消耗した体力と時間を埋め合わせることができました。

☆6月11日: 伊勢本街道 高井の千本杉から榛原宿(曇)
<2万5千分1地形図>    
初瀬(和歌山1号-2)
<行動時間>

    宿舎=(TX 5Km 2000円-)=高井千本杉(8:24/33)-仏隆寺・室生寺分岐(8:48)-高井バス停(8:51)-不動堂(9:10/13)ー御井神社(9:27/45)-山の神(9:49)-弘法大師の岩清水(10:04)-墨坂神社(10:15/30)-大神宮灯籠(10:43)-札の辻/あぶら屋(10:44/47)-(10:53)榛原駅[11:10]=(送迎バス)=[11:16]美榛苑/日帰り入浴(520円)・昼食/[13:00]=(送迎バス)=[13:06]榛原駅[13:17]=(近鉄急行 1017円)=[13:32]大和八木[13:40]=[13:49]平端[13:50]=(急行)=[14:01]大和西大寺[14:05]=(近鉄特急京都行 E510円)=[14:35]京都[14:56]=(ヒカリ#472 7880+E4860円)=[17:22]新横浜[17:32]=(257円)=[17:48]あざみ野[17:53]=(154円)=[18:04]宮崎台
<ルートの概要>
 
旅の終わりの日は昼前だけの半日行程です。
伊勢本街道の高井から榛原までの 6Km 程を歩きました。

(クリックで全体像)

  タクシー会社が1台しか車を回してくれなかったのでピストン輸送して貰うことにし、ふたつのグループに分かれて高井の千本杉へ向かいました。

  時間差を縮めようと、先行グループが千本杉より1Km ほど手前の高井バス停で車を降りたまでは良かったのですがドライバーが教えてくれた道が間違っていたため、危うく曽爾村の方に行ってしまいそうになりました。

  間違えに気がついたタクシーがレスキューに来てくれたので、手早く合流できたのですが、知らない土地をあなた任せで歩くことの危うさを思い出させられました。

  高井の千本杉は紀伊半島のあちこちで見られる巨大な杉のひとつですが、井戸の周りに植えられた数本の杉が合体したものと言われ、街道筋の集落の中にあるのに非常に太いのは驚きでした。

  千本杉からから僅か下った所に立っている道標に、
「←伊勢 | 大阪→」
と記した腕木が取付けてありました。

  さらにその下手の三叉路には、千本杉・石割峠へと仏隆寺・室生寺とへの道の分岐を示す道標が立っていました。


  人気がなく裏寂れた雰囲気の高井集落を通り過ぎ、暫く歩いた所で国道を外れて左手の山に上がると僅かな距離ながら残されている旧道の道筋があってつかの間の古道歩きを楽しむことができました。

(クリックで本殿)

  所々に残っている旧街道の遺跡を見ながら1時間ほど進んだ所に御井神社がありました。
広くて長い参道を進んでゆくと山裾に広々した境内があり、優雅な拝殿の軒下で休憩しました。

(クリックで本殿)
  元の道に戻ってまた歩き出し、山の神、弘法大師の岩清水などを見ながら進んでゆくと橋の手前の左側に朱塗りの鳥居が立っていました。

  左折して鳥居を潜り、川沿いの道を進んで行くと一段上がった所に墨坂神社がありました。
大和勢力の伊勢地方への進出と関係がある古い神社ということですが、大きく優雅な朱塗りの神門が印象的でした。

  ここまで順調に来られたので境内でタップリ長休みをする時間が確保できました。
Kさんが持参した奥方手造りのお菓子を賞味しながらこの旅の最後の休憩を楽しみました。

  神社境内の石段の下から朱塗りの橋を渡れば榛原の市街地です。
それと思われる道筋を選んでゆくと大きな古民家があり、案内役のおじさんが立っていました。

  何かを商う商家だったのを復旧してビジターセンターもどきに利用しているようでした。

  前大戦末期に米軍機の機銃掃射を受けた痕跡が残っている近鉄のガードの下を潜って線路の北側の十字路を渡ると旧旅籠 「あぶらや」 の主屋があります。
内部が公開されていて、昔風の宿屋の造りを見学することができました。


  あぶらやの斜向かいに伊勢本街道の道標が残っていました。
工事中か何かで土嚢が積まれ、網の仮フェンスで囲まれていたりして殺風景でした。

 
<三日目のまとめ>
   路線バスの便数が少ないので朝早く高井までタクシーで入り、榛原へ戻ってくる行程を設定しました。
7時半過ぎにタクシー会社に電話し、8時に車をと依頼したところ、こんなに早い時間には受け付けられないと、断られました。
出発時間が近づいたので再度電話し、5人グループなので2台必要と言ったところ今度は、1台しか回せないという返事です!
全国各地でタクシーを利用しているのにこんな応対に出遭ったのは初めてだったので腹を立て、宿舎ロビー係員にクレームを言ったものの仕方なく、1台でピストン輸送をしてもらうこととなりました。
事前の調べで、榛原には複数のタクシー会社があり、保有台数も多いことが分かっていましたが、このような不条理が生じるようになったのは、宿との特約か何かのせいで局地独占状態が形成されたためのようでした。

  あとで、タクシーのドライバーに尋ねてみたら、福祉タクシーの契約があって早朝は2台がそちらに拘束され、自由に動かせる車が1台しかない、という説明で、半信半疑の納得をしたのですが、結果はオーライで、ほぼ予定通りの時間で全行程を終了し、午前11時過ぎに榛原の宿舎に帰着できました。

  時間の余裕が得られたお陰で、ひと風呂浴びて汗を流したあとでゆっくりお昼を食べ、予定より1時間早い電車で帰途に就くことができました。
ページ先頭へ    

☆この旅全体のまとめ
<まとめ>
  3日の旅の全体を眺めることができる写真アルバムです。
  Google フォト ストーリーを見る

<おわりに>

    半年ぶりの年寄りグループの旅で、出発前後や途中で軽微な差し障りもありましたが、この時期としては珍しい好天に恵まれ、2泊3日の徒歩旅行を楽しみました。