南房総、請雨山および愛宕山から二ッ山 (2012.2.18-19)

(β Version)
☆期日/天気/山行形式: 2012年2月18-19日 旅館1泊2日
☆地形図(2万5千分1): 坂畑(大多喜13号-4)、鴨川(大多喜14号-3)、金束(横須賀2号-1)
☆まえがき
    ここ数年、厳冬期に房総半島の山に行くのが習いになっている。
これまでに目ぼしい山の半分くらいに登ったと思うのだが千葉県最高峰の愛宕山(408.2)は、頂上に峯岡基地があって自由に登れないため、これまで足が向かわないでいた。

  登頂希望の日時を指定して申し込めば良いのだが山に登るのに届出けをしなければならないことに違和感があった。
毎年、2月20日前後の日曜日に基地公開が行われていて、この日にあわせて行けば、山麓の鴨川国保病院から基地までバスで運んでくれ、基地内展示の見学と三角点峰登頂の案内をしてもらえることを知った。
これならただの低山歩きとはひと味違って面白いかも、と思ったのでシニア友達に話したところ興味あり、という返事で、久しぶりの「パーティー山行」となった。

  愛宕山は鴨川市街の東約15Km ほどにあってアクアライン経由、高速(急行)バスを乗り継いで行けば日帰りも可能だという事が分かったのだが折角房総半島の先端近くまで行くのだから現地に一泊することとし、行きがけにひと山登ってゆくことにした。
また朝一番に峯岡基地に上がれば、展示の見学と三角点峰登頂は朝のうちに済ませられる。
そのあと隣の二ッ山(376)へまわり、大山千枚田(150)から大山不動尊を経て金束(60)に下山しても時間的な余裕は十分だ。
山と棚田と古刹と、一度で三回美味しい低山歩きができるだけでなく、金谷から久里浜にわたる東京湾フェリー船上からは西の海に沈む夕日を眺めることもできると思った。

請雨山 愛宕神社鳥居脇の展望  
 (クリックすると拡大、スクロール)
  初日の早朝雪が降ったが2日続きの好天に恵まれ、南房総では珍しい雪山展望を楽しむことができた。
初日、君津最奥の尾崎(185)から三郡山(337を目指したが、取付きの探り出しがうまく行かなかった。
林道を迂回して尾根筋の北側に入り、東尾根からの登頂を企てたのだが時間切れとなり、僅かにこの山域随一の展望スポット 請雨山(330)からの展望を楽しんだだけで終わった。
  二日目も冷え込んだが抜けるような好天にめぐまれ、鴨川国保病院の玄関先から送迎バスで峯岡基地に上がり、太平洋の水平線を背に広がる鴨川市、嶺岡浅間、烏場山の展望を眺めた。
愛宕山三角点に登頂したあと基地開放の展示を見学したが兵器の類は日頃間近に見る機会がないのでとても興味深く見学した。
峯岡林道を歩いて西隣の二ッ山にまわり、北面の肩から房総主脈の山並みと長狭盆地の展望を楽しんだ。
金束への下山の途中、鴨川自然の王国、大山千枚田、大山不動尊をに立ち寄った。
意外に早く金束に下り着いたため、バスの待ち時間が長かったが、バス停の隣に「梅本」食堂があったのは幸いだった。
八十八歳と言う高齢ながら元気いっぱいのおばあちゃんご自慢の支那そばを食べたあとこの土地の事を色々聞きながら休憩することができた。
 

☆行動記録

2月18日(晴) 君津奥から三郡山に登れず、請雨山(鳥居)のみで終わった
宮崎台[7:15]=大手町=[8:01]東京/八重洲口前[8:25]=(高速バス木更津東京線)=[9:29]木更津駅西口/朝食/東口[10:40]=(鴨川日東バス)=[11:31+10]サン・ラポール(11:45)-尾崎入口(12:04)-ポンプ小屋(12:18)-圃場入口(12:25)-柵で行止り(12:28)-林道淵ヶ沢奥米線入口(12:42)-林道高山線三叉路(13:17)-安房高山入口(13:26)-愛宕神社鳥居(13:45/14:10)-横尾林道折り返し(14:33)-大日如来/馬頭観音入口(14:46)-西の尾根(14:54)-東の尾根 323m峰(15:03)-林道(15:10)-旧三島トンネル入口(15:19)-新国道 410号線(15:42)-旧国道入口(15:48)-長狭街道(16:14)-長狭中学前交差点(16:20)-国保病院前(16:22)-(16:35)宿舎(寺門春木屋旅館)

<概要>
    東京駅八重洲口前8時40分のアクアライン高速バスで出発し、木更津東口から10時40分に出る鴨川行きバスに乗り継いで行く計画だった。
バスは予約制でなく、行列順に乗車し、満席になり次第打ち切る方式だったため待ち合わせを少し余裕のある時間に設定していたところ、ひとつ前の8時25分発に間に合ってしまった。
十分な乗り継ぎ時間を見込んでいたところへひとつ前のバスとなったため、鴨川行き急行バスが出るまでありあまる待ち時間があった。
東口バスターミナル横の建物の2階にある喫茶店に入り、モーニングサービスのセットメニューでゆっくり腹ごしらえをした。
  この日の早朝、南房総では珍しい雪が降った。
バスが進んで行くとあちこちにスリップした跡があり、事故の後処理が行われているのが見られたりもした。
寒気が流入して気温が上がらず、所々で路面が凍結したままになっていたため、定刻より遅れてサンラポール前に着いた。
サンラポールって何?、と思っていたが、君津市南端部の山中にある巨大な老人養護施設だった。

バス停の僅か先に県民の森があった。
ロッジ村やキャンプ場があってシーズン中は賑わうようだがこの日は雪景色の中で静まり返っていた。

  県民の森の先の駐車場の奥手から右下の川に下ってゆく道があった。
道の入口にコースサインのテープが巻き付けてあり、ここが取り付きに違いないと思った。
もう少し時間があったらここから入山すべきだったのだが、今回はスタート時間が遅く、すでに昼時になっている。
行程を短縮するため君津最奥の尾崎集落から取り付く計画にしていたのでそのまま先に進んだ。
 
  尾崎から山への入口の目処は道路脇にある農産品売り場だった。
バス停から意外に短時間で到達したので早速取付きの探索に掛かったのだが意外な難航となった。

  詳細はGPS トラックと GPS スライドショーに委ねるが、林道から小尾根を狙ったのは道が塞がれていて不可。
  農産品売り場向かいの圃場の奥手にルートを求めたが山との境界に厳重な柵が回らされていて、ゲートには立入禁止の掲示が掲げられていた。
 
  無理やり突破するのは止めて転針。
峠に向かって少し進んだ所で左手に分かれている林道に入り、少し先の二股で閉鎖されていない左股の淵ヶ沢奥米線に入った。 
    雪景色を見ながら林道を進んでゆくとトンネルが見えてきた。
地形図と照合し、正しい迂回ルートに乗っていることを確認した。
  トンネルの150m ほど先に三叉路があり、そこを右折して高山線に入った。
切り通しを抜けて稜線の南側に回りこむと左手に長狭盆地がみえてきた。

  馬頭観音と梵字の石碑が並んでいる先で「安房高山」と記した道標をみた。
さらに進んでゆくと緩く下り気味になろうとする林道から分かれて右上に登ってゆく階段道があった。

  とにかく高いところに上がりたいので迷うことなく階段道に入った。
左下が崩壊跡に土留めを施した広大な斜面になっていて視界が開けた。
長狭盆地の向かい側に並んでいる峯岡浅間と愛宕山が見えてきた。

請雨山東肩から愛宕山、嶺岡浅間を望む  
 (クリックすると拡大)

 (クリックすると拡大)
  フェンスに沿って階段道を登り切ったところに小広場があり "愛宕神社" と記した額を架けた鳥居があり、フェンスの際に寄ると、ページ冒頭のような展望が見えた。
  あとで知ったのだが、この山は請雨山と呼ばれ、この一帯で最高の展望峰だと言われている。
スローペースながら尾崎からここまで結構長い時間歩き続けていた。
景色を眺めながら飲み食いをして長目の休憩をした。

  さらに三筋山への登路を求めて尾根沿いを西に進み、それらしい踏み跡を探ったのだが左のような "三郡山-請雨山" と記した道標は見たものの、時間切れとなり、ついに三郡山頂上に立つことなくこの日を終わった。

 (クリックすると拡大)
  閉鎖されている旧道トンネルの前から下降路に入り、ひと下りすると新道に出た。
週末のせいか割りと車が多かったので、新道を少し歩いた所で右手に分岐している旧道にエスケープしたところすぐに谷底の落ち着いた風情の集落に入った。

  旧道は車も走って来ないのでのんびり歩いてゆき、やがて枯れ田の中に出た。
振り返っていま歩いてきた山並みを見ると、このあたりで一番高い峰の頂上間近かに鳥居が見えた。

  長狭街道に出た所から500m ほど東の君鴨道交差点まで行き、翌朝のバス乗り場に指定されている国保病院のあたりを確認した。
道端の水溜りが凍結したままになっているのを見ながら長狭街道を戻り、西へ1Km ほどの川縁にある旅館に入った。
各地の街道沿いに残っている古宿のひとつだったが、建物が大きくて食べ物が美味しく、居心地の良い宿だった。

<ルートの詳細>




  GPS スライドショー



  Flickr の元画像スライドショー



  ルートマップ


2月19日(晴一時曇) ページTOPへ    
峯岡基地から愛宕山に登ったあと二ッ山-大山千枚田-金束を歩いた
<行動時間>

    宿舎(8:20)-(8:25)国保病院前[8:35]=(送迎バス)=[8:50]峯岡基地(8:59)-三角点(9:06/10)-芝生広場(9:13/21)-基地見学(9:28/10:15)-林道ゲート(10:21)-二ツ山入口(10:44)-二ツ山(10/46/11:10)-二ツ山入口(11:12)-嶺岡中央林道(11:15)-太田代分岐(11:29)-鴨川自然の王国(11:45/12:33)-太田代分岐(12:46)-平塚分岐(12:52)-棚田倶楽部(13:10/25)-大山不動尊(13:46/57)-金束梅本(14:20/15:45)/金束郵便局前バス停[15:54]=(鴨川日東バス)=[16:24]浜金谷[17:20]=(東京湾フェリー)=[18:00]久里浜港[18:12]=[18:24]京急久里浜[18:38]=横浜=あざみ野=[20:01]宮崎台

航空自衛隊峯岡分屯基地から南方 鴨川市街、嶺岡浅間、烏場山を望む  
 (クリックすると拡大、スクロール)
<概要>
    峯岡基地公開日に鴨川国保病院の玄関先から運行されるチャーターバスの始発は8時30分だった。
厳寒期だから朝早くから出てくる人は少ないのではと思ったので定刻の僅か前に着くように行ってみたらもう1台目は満席で、2台目も最後部の座席になるくらいだった。
ハイカーは少なく、子供連れの大人とデジいちを持ったミリタリーマニアっぽい中年男が多かった。

  バスは補助席も含めて満席になるとすぐに出発。
30分足らずで基地に着いて宿舎と体育館の間の広場に出ると南の方に上のパノラマ写真のような景色が見えた。
  左手すぐ下はヘリポートで、その先に鴨川の市街と太平洋の水平線、正面に峯岡浅間とその右に烏場山が見えた。

  展示を見はじめたところでヒョイと後ろを振り返ったら登頂グループが歩き出していた。
急いであとを追い、グループに加えてもらって石段を登った。
短い登りだったが身体が目覚めていなかったようで息が切れ、ひと汗かかされたあとようやく三角点標石と太い標柱のある頂上に登り着いた。
  登頂記念写真などを撮りながらしばらく頂上にとどまったあと、金網フェンスに沿った通路から階段を下り、頂上北肩の芝生広場に出た。
目の前に下のような展望が拡がり、長狭盆地北側に昨日歩いた山並みが一望だった。
左手遠く果ては鋸山で、その先は東京湾だ。

航愛宕山頂上北肩 芝生広場の展望  
 (クリックすると拡大、スクロール)

  しばらく景色を楽しんだあと案内の隊員に従いて基地に戻り、あらためて移動レーダや対空火器などの展示物を見学した。
日頃、兵器の類を間近に見ることはないのでどれも興味深かったが、頂上に行ってる間に飛来し、地上展示されていた救難ヘリ UH-60J は特別で、巨大な防弾増設燃料タンク、暗視装置、マーカなど、様々なハイテク救難/救出装備の塊だった。

  ひと通り見終わったあと二ッ山に向かった。
基地ゲートをでて 500m ほど歩くとT字路で林道に合流する。
左折して西に向かい、ごく緩やかに下って鞍部を渡った先で左手に登ってゆくと、二ッ山頂上入口と記した標識があった。
杉林の中を緩く登って300m ほど進むと杉林を切り開いた直径40~50m ほどの頂上広場があった。
雪の原の真ん中にアンテナ鉄塔が立っていてまわりを林に囲まれ、展望はなかったが北側の肩に出ると視界が開け、下のパノラマ画像のような景色が見えた。
左手に形の整った双子峰の富山が見えた。
里見八犬伝ゆかりの富山は、その東にあって房総の槍ヶ岳の異名を持つ伊予ヶ岳と好対照をなしている。
これらに登りに来たのがきっかけとなって毎年房州への山行をするようになった。
  展望を楽しんだあと広場に戻り、丸太に腰掛けて飲み食いをしていたら大勢の年寄りグループが来た。
近在の人達で、基地開放を見るため貸切バスで来たということだった。

二ッ山頂上北肩の展望  
 (クリックすると拡大、スクロール)

 (クリックすると拡大)

  長い休憩のあと林道に戻り、山の西肩から南面にまわり込んで鴨川自然王国を訪ねた。

  前の晩泊まった宿の親父さんに聞いたところでは、このあたりは歌手の加藤登紀子夫妻が移り住んでいる所で、亡くなったご亭主は地元のオジサン達の良い飲み仲間だったらしい。
  "Cafe En" と記した看板を出しているテラスハウスがあった。(左)
あたりはとても綺麗な里山風景になっていた。

  たっぷり時間があったので中に入り、カフェラテを飲んでチーズケーキを食べた。

 (クリックすると拡大)


  もとの道に戻ってひと下りした所から右手に下って行くと大山千枚田で、ゆるやかな尾根の背の道の両側に棚田がひろがっていた。
首都圏に最も近い所にある棚田と言う。
緑が広がる時季に訪ねれば美しい千枚田の景色が見れるに違いない。



  鴨川市立棚田倶楽部で休憩したあと左手に下り、尾根を一本乗り越えていった先に大山不動尊があった。
  極端に急な石段をやっと登り切ると目の前に堂々とした不動堂が立っていた。
奈良時代開山の古刹で相模の大山不動、成田不動と並んで関東三大不動の一つに数えられていると言う。
千手観音像が印象に残った。

  大山不動から金束バス停まではひと下りだった。
浜金谷へのバスまで1時間半超も寒中の野外で待なければならないか、と思ったがバス停脇に "梅本" という食堂が暖簾を出していた。
八十八歳ながら元気いっぱいのおバァちゃんご自慢の支那そばを食べながら温かい店の中で休憩できた。
  金谷の東京湾フェリー乗り場まで約30分だった。
前の便が出たばかりで50分あまりもの待ち時間があった。
フェリーターミナルの土産物売り場は週末旅行から帰る途中の人達でごった返していた。
外に出て隣の建物、ついで道向かいの店も見てまわり、手土産に干物などを仕入れた。
久里浜に渡る船の上からは西の海に沈む日が見えたあと綺麗な夕焼けになった。
<ルートの詳細>




  GPS スライドショー



  Flickr の元画像スライドショー



  ルートマップ
前に戻る    
☆おわりに
    恒例の房州山行は2日続きの好天に恵まれ、久し振りのパーティー山行を楽しんだ。
例年になく寒い冬のお陰で、降雪直後の南房総の山を歩く機会に恵まれ、珍しい雪山の景色を見ることができたがルート上に凍結している場所が多く、足元に注意を要した。
山だけでなく、峯岡山基地の見学をはじめ、鴨川自然王国、大山千枚田、大山不動尊などを訪ね、おまけの多い山行だった。