多摩市の最高点、天王森公園 (2005.3.12)


☆期日/山行形式:
2005.3.12 ミニウオーキング、単独

☆地形図(2万5千分1): 武蔵府中(東京11号-1)

☆まえがき
  1月に横浜と川崎の最高点探検のレポートを出したら川崎最高点の丸山城/黒川排水場のすぐ東にある、161.7m の一等三角点が多摩市の最高点だと教えてくれた人がいた。
以前から気に掛けながら行き損ねていた聖蹟桜ヶ丘記念館の見学を兼ねて行ってみた。

  雲が多くて楽しみにしていた山岳展望は得られなかったが、活気のある新興住宅地の様子を見たり、昔プレーしたことのある米軍ゴルフ場の前を通ったり、聖蹟記念館に行く途中で綺麗な桜ヶ丘公園を通るなど、内容豊富なウオーキングができた。







  天王台橋付近の園地から望む多摩市最高点の天王森。
  宅地開発の真ん中に、孤島のように残された小さな森だが、八坂神社の小社、明治天皇御野立所の石碑、一等三角点標石、水道記念碑など、盛りだくさんだった。



☆ルートの概況

    今回はちょっと遠目のお散歩といったところだ。
歩いている途中でお昼の繋ぎをすることにして、小さいバッグの中にコーヒを詰めた小テルモスとエビフライパンをひとつ、デジカメと同居させて担ぎ出した


  京王電鉄相模原線の若葉台駅で下車。
大きなショッピングモールの横を歩いて行くと、その先の左手にある電車の車庫と右手の稲城第六中学校の校庭の土手の間に遊歩道の入り口があった。
  古ぼけてほとんど字が読めないくらになった道標のある角を曲がって遊歩道に入る。
緩やかな登り坂の途中の向かい側に、稲城台病院がある。
  坂を上りきった所は、"多摩よこやまの道" の東端で、その入り口を示す道標が立っている(左)。
  右手にカーブして天王橋を渡るとすぐ右に高みがあった。
  綺麗な園地で、緩やかな芝生の斜面に緩く長い滑り台があって小さな子供でも楽しく遊べそうな感じの良い園地になっている。

  アンテナ塔のある最高点付近からは、若葉台駅付近の新興住宅地が見渡せた。
  "よこやまの道" を歩いたついで立ち寄ってみる価値がある所だが、ここはまだ目的地ではない。
  園地の奥手から前途を眺めると、ページトップの写真のように小さな森が家並みの上に見えた。
付近には、そこより高いところはなさそうだからあれが目的地に違いないだろうと見当を付け、車道に沿って先に進む。
長い跨線橋で "尾根幹線道路" の上を渡ると道の左側は多摩大学の建物で、道路を挟んだ向かい合せに小高い森があった。
小さな畑の脇の踏跡を登ってゆくと、明治天皇御野立所と刻んだ高さ3m ほどの石碑と、こじんまりした八坂神社のある頂上に着いた(若葉台駅から30分ほど)。
  一帯は宅地開発で山が均され、木が伐られてカラーンとした雰囲気になっているがここだけは昔の森が残っていて異質な空気が流れている。

   明治天皇の事績を記した看板を見たあと、社殿の北側に回るとコンクリートの囲いの中に一等三角点標石があった。
標石の背後に立っている説明看板によれば、全国に約400ある一等三角点のひとつだという。

  これで今日の第一目的は達した。
次は二つ目の目的地である聖蹟記念館へ向かうのだが、その途中で一箇所、立ち寄って確認して行きたい所があった。

  この一帯を描いた2万5千分1地形図: "武蔵府中" を眺めていて気がついたことなのだが、この付近には妙に沢山の三角点(と標高点)がある。
そのひとつが通り道からちょっと入った所にあるようなのでそれを実見しようということだったのだ。

  寺院のマークのすぐ近くだったのでそれを頼りに脇道に入ったら、稱名寺という寺の裏手の駐車場の端の笹薮の手前に標石が立っていた(左)。
なんでこんな所に?、と思いつつ近寄ってよく見ると "陸軍用地..." と刻んであった。

  あらためて調べてみないと分からないがこの一帯はかつて陸軍の演習地になっていて、野戦訓練のためなどでいくつかの標石を設置したのではないだろうかと思った。
疑問が解け、すっきりした気分になって通りに戻る。
  バス停のある坂を下り切ると道の右側にある門に米軍ゴルフ場の表札が掛かっていた。
ここでは昔、一度か二度プレーしたことがあるような気がする。
そのすぐ先の道路の左側から桜ヶ丘公園が始まる。
武蔵野の台地に谷戸が食い込んで複雑な地形になっている所に残された山林を利用して作られた公園だ。
  まだ冬枯れ状態で、枯木の林と茶色の草原だが、春の気配はあって、梅が咲いていたり、彼岸桜が咲き始めていたりしている。
  奥手にある管理事務所前の看板に描かれた案内図で確かめ、林の中の細い道を登って聖蹟記念館に行った。
  この一帯は明治政府の中心人物の一人だった三条実光の別荘があったため、明治天皇が何度も足を運んでおり、この記念館はそれを記念して設立された展示館なのだそうだ。

  桜ヶ丘と言う名の通り、公園には桜が多いから春になれば大勢が花見に来て賑わうに違いない。

  記念館は大きな円形の建物で、中に入ると丸い展示室がある。
真ん中に明治天皇の騎馬銅像が立ち、周りの壁には明治の元勲達が残した書画が展示されていた。

  一度は取り壊しが検討されたが近代日本の原点を伝える歴史遺産のひとつとして維持されることになった言う。
偏狭な歴史観による排斥か、金の亡者が宅地にして一儲けしようと企んだのか、愚かなことをしないですんで、本当に良かったと思う。
若葉台駅から歩き出して2時間あまり、少々疲れたので記念館の向かい合わせにある "五賢堂" の石段に腰を下ろして休みながら菓子パンとコーヒで空腹を癒した。

  最寄の駅は京王線聖蹟桜ヶ丘駅で3Km 近く離れている。
天気が良ければ歩いてしまう距離だが非常に冷たい風が吹き出し、本曇りになってしまった。
最寄の乗り場からバスで帰ることにした。

  記念館の横手から広い道を進んで門の外に出て、奥多摩、奥秩父連峰から "南" の荒川岳あたりまで見えると記した展望説明板のある小広場を過ぎるとすぐの所にバス停があった。
バスが来るまで10分近く待ち、さらに体が冷えたが、車内は暖房が利いていて助かった。
京王電車から、分倍河原でJRに乗り継いで溝の口へ、さらに東急線に乗り継いで帰宅した。


☆おわりに
    この冬は始めて、都会郊外の遊歩道をまとめて歩いた。
資本の論理が命ずるまま無軌道に暴走したがる土地開発へのリアクション、ないしは最後の砦として、このような遊歩道の整備が進められているように感じた。
老齢化社会では手軽な健康施設あるいは、医療費節減に役立つインフラとして役立つだろう。