観音平-青年小屋-権現岳-三ッ頭-天女山 (2005.8.4-5)


☆期日/山行形式:
2005.8.4-5 営業小屋利用1泊2日 単独

☆地形図(2万5千分1): 八ヶ岳西部(甲府9号-3)、八ヶ岳東部(甲府9号-1)、谷戸(甲府9号-2)

☆まえがき
    夏山シーズンのピークに南八ヶ岳の権現岳から三ッ頭への稜線のトレースをしに行った。
昨年6月末に歩き損ねて以来の宿題だったし、この時期はみなアルプスに行ってしまうから案外静かかも、と思ってのことだった。

  行程のあらましは、小淵沢駅(900)からタクシーでアプローチして観音平(1585)から歩き出し、雲海(1865)、押手川(2090)から網笠山(2523.7)を越して青年小屋(2385)に宿泊。
翌朝は、ギボシ権現小屋を経て権現岳(2745)に登頂したあと三ツ頭(2580)へ頂稜を辿り、前三ツ頭(2364.4)から1859m 標高点、天ノ河原(1625)を経て天女山(1528.8)駐車場へ下山。
甲斐大泉駅(1648)付近で入浴したあと、小淵沢を経て帰ろうというものだった。

  初日は天気が安定せず、正午前後からにわか雨が断続する様になったため、編笠越えを中止、巻き道から青年小屋に直行したが、二日目の朝は天気が良くなり、"南" や八ヶ岳核心部への展望を楽しむことができた。
ギボシから権現、三ッ頭を繋ぐ頂稜は、展望が良いだけでなく、高山植物の花の種類も多かった。
手近に楽しめる花と展望の名ルートだった。

 観音平まで車で来て青年小屋経由、権現岳に登頂、三ッ頭をまわって八ヶ岳神社から観音平に戻る周回ルートは割りに良く歩かれているようだったが、週日だったせいか、小屋に泊まったのは全部で27人、一部は赤岳方面へ縦走したから、残りは精精20人前後、いくらかの時差出勤のおかげもあって最盛期とは思われないほど静かな山歩きができた。


権現岳頂上から望む赤岳、阿弥陀岳方面 (クリックで拡大します)
☆行動記録とルートの状況
4日
<タイムレコード>

    宮崎台[7:16]=長津田=八王子[8:33]=(スーパーアズサ#5)=[9:53]小淵沢[10:00]=(タクシー\2920)=[10:15]観音平(10:25)-雲海(11:25/40)-押手川(12:25/40)-小休止(13:20/25)-(14:00)青年小屋

  前日に小淵沢駅のタクシーに所要時間や運賃を問い合わせたついでに予約をしておいた。
駅前の車列の先頭の車で観音平に向かう。
タクシードライバーは地元情報の生き字引だ。
例によって色々と情報を仕入れる。
  最近、黒戸尾根から甲斐駒に登る人はめっきり少なくなったが、今朝は早朝4時半出発の予約があって年配の人が行ったそうだ。
  観音平には10台を越す車が停めてあった。
手早く山支度を整えて登山道に入る。
時間がずれているせいもあってルートは閑散。
時折下山してくる人と出遭う程度だ。

  雲海(左)までは楽だと思っていたが、身体が鈍っていたせい結構きつく、時間が掛かった。
  そこから押手川(左)までは案外楽で、あっけなく到着した。

  どうも空模様が変だ。
休憩しながら身の振りようを考えていたら、遠くから雷鳴が聞こえてきた。
これで決心がついて、網笠山越は中止、青年小屋に直行する巻き道に入った。
こちらは林の中を通っているので少しくらい降っても傘が要らない。
  途中一回休憩して青年小屋に着いたが小屋の手前数分程の手前からやや強い雨になり、辛うじて傘なしで小屋に飛び込んだ。
  小屋は、熟年単独者5人との相部屋になった。
静岡(富士)、群馬(前橋)、立川、川越からの山慣れた人たちで四方山話で賑やかだった。
  この日、小屋に泊まったのは全部で27人。
100人は優に泊まれる小屋だから余裕十分だ。

  午後遅く、激しい夕立になった。
山麓地域一帯に大雨洪水情報が伝えられたようだ。
翌日の天気がどうなるか、気になったが、テレビの予報は昼まで大丈夫と言うことで一同安心して寝床に入った。
  見かけはパッとしない小屋だが、内部の手入れは行き届き、布団や毛布も清潔で、食事の内容も良く、居心地は快適だった。

                                                                                                        ページ先頭へ

5日
<タイムレコード>

    青年小屋(6:30)-小休止(7:25/35)-権現岳(8:00/20)-三ツ頭(9:00/10)-前三ツ頭(9:40)-推定2000m地点(10:15/30)-1859m 標高点(10:45)-天ノ河原(11:20/25)-(11:35)天女山駐車場[11:45]=(タクシー \2250)=[12:00]パノラマの湯(13:50)-(13:55)甲斐大泉[14:12]=[14:26]小淵沢[14:39]=(スーパーアズサ#52)=[16:01]八王子=長津田=宮崎台

  明るくなると間もなく目が覚めた。
少し高度の影響が出て軽い頭痛があったが1、2分の間、深呼吸したら治った。
窓の外には青空が広がっている。
楽しく山を歩けそうだと、同室の一同ニコニコ顔になる。
恒例の目覚ましコーヒは、銘水 "乙女の水" で汲んでおいた水で淹れた。
  朝食は5時半から。
いつものように飯は少なめにしてゆっくり食休みをしながらトイレ、パッキングをし、シンガリで出発した。
潅木の間の道を登って、高度を稼ぐに連れてまわりの木が低くなり、視界が開けてきた。
右手に西岳が穏やかな整った姿を見せていた。

  小ピークに上がると正面のギボシが高く、その先に朝日を背に権現岳のシルエットが浮かび上がった。
頂上付近の岩塔群が特徴的だ。


  ギボシの肩を巻く鎖場を途中で振り返ると、岩塊に覆われた斜面が目立つ編笠山が目の下で、その先の釜無川谷を覆っている霞の上に仙丈、甲斐駒、白根など、"南" のジャイアンツが顔を出していた。

  色々と思い出の詰まった山々だ。


  ギボシの肩に上がると権現岳と正対する。
尖がった岩峰が特徴的だ。

  手前の稜線直下に権現小屋がある。
よくこんな険阻な場所に維持しているものだと感心する。

  小屋の上を通り過ぎるとすぐに、道標の立つ三叉路がある。
左は、鉄製61段の源治ノ梯子を降り、朝日岳、ツルネ、キレットを経て赤岳の方に行く縦走路だ。

  右に僅か進んだ権現岳岩峰の根方からひと登りで鉄剣の立つ頂上に上がった。
同室メンバーのひとり、"前橋のお兄さん" に頼まれ登頂記念写真のシャッターを押してあげた。
  狭い所だが2年がかりで登った頂上だ。
岩の窪みにザックを置き、暫く油を売ることにした。

  赤岳から阿弥陀岳への山並みが霧を纏って、夏山らしい華やかな姿を見せている。

  デジカメをパノラマアシストモードにして連峰核心部の展望を撮った。(→ 冒頭パノラマ写真)。
デジカメのパノラマ合成写真は、"山屋" にとって、とてもありがたい "特技" だ。

  おばちゃんたちの大パーティが来たので場所を明け渡し、三ツ頭に向った。
暫くは岩場混じりの急降下が続くが、要所には鎖が取り付けてあって安全が保たれている。

岩陰にヒメウスユキソウやチシマギキョウ(左)はじめ、色々な山の花が咲いていた。

  いったん森林限界まで下って鞍部を通過、また登り返して這松の頂稜を辿ると岩塊が盛り上がった三ッ頭頂上に着く。

  霧が出てきたが時たま切れ目があって、さっきまでいた権現岳の尖峰が見え隠れしている。

  三ッ頭を越してひと下りの所に道標が立っていた。右に分岐する道に入ると、八ヶ岳神社を経て甲斐小泉/観音平に行ける。
観音平に車を置いてきた人達は皆こちらに下りて行ったようだ。
前三ッ頭/天女山へは直進する。
こちらも良く踏まれていて良い道だ。


  ルートのあらかたは混交樹林の中を通っているが所々に火山性の裸地がある。
直射日光に曝されると暑いが、霧が日差しを和らげてくれるのがありがたい。


  裸地の末端にある岩塊の盛り上がりが前三ッ頭だ。
道標に従って尾根の左側へ下る。
支稜に乗り移るため、かなり急な斜面を下って行くが随所にロープが張ってある。


  ロープが断続する急降下は約30分ほど続いた。
登ってきた数人と擦れ違った。
天女山から権現岳まで、登りの標準時間が4時間半、下り2時間半だというから日帰りが可能だが中間部にあるこの急登の消化はなかなか大変だろう。

  ようやく傾斜が緩んできた所でザックを下ろして小休止。
すぐ下に "標高2000m" と記した標識板が立っていた。

  休憩地点から天女山上の天ノ河原までの尾根下半部は、緩やかな下降が続き、ノンビリ森林浴ムードになった。

  左は大きな岩塊のある1859m 地点で尾根上のちょっとした盛り上がりになっている。

  広い裸地があった。
また森に入ろうとする所で今降りてきた山を振り返る。

  遠ざかった三ッ頭と前三ッ頭が見え、その背後に流れている雲の隙間に権現岳が見え隠れしていた。

  高度が下がった所へ雲が消えてきて日があたり、かなり暑い。
急いで裸地を歩き過ぎ、樹木の間に入る。

  まもなく天ノ河原に着いた。
数基の野外ベンチのある園地になっていて、ドライブで来た家族連れが遊んでいた。
ここは尾根の盛り上がった所が裸地になっていて眺めが良い。


  天ノ河原から一段下ると天女山の駐車場がある。
標高1530m ほど。
真夏でも爽やかな涼風が吹いている。
広場への出口にザックを下ろして携帯でタクシーを呼び、山支度を解いたり、飲み食いをしながら車を待つ。
  温泉と食事のため、"パノラマの湯" に行った。
  "パノラマの湯" は、甲斐大泉駅のすぐ下にできた新しい村営日帰り入浴施設だ。
隣接の村営宿泊施設 "いずみ荘" と廊下がつながっていて、レストランで食事をしたり、大広間で休憩もできる。

  広々とした露天風呂で真昼の入浴を楽しみ、汗まみれになった着物を全部取り替えてサッパリした。
レストランに行き、ソースカツ丼を食べたが、これはミステークだった。
疲れた身体の欠陥胃袋には負荷が重すぎ危うく消化器官の機能を駄目にするところだった。


                                                                                                        ページ先頭へ

☆おわりに
    夏山最盛期としては短い、一泊二日山行だったが、八ヶ岳南端部で静かな山歩きを楽しんだ。
南北あわせれば十数回も登っている八ヶ岳だが、残雪期/新雪期の山行が多かった。
特にまともな夏山シーズンに南八ヶ岳に登ったのは、今度が初めてだったような気がする。

八ヶ岳の展望が優れているのは以前から分かっていたのだが、高山植物の種類が非常に豊富なことをあらためて認識した。

八ヶ岳も花の名山だった。