高尾山-城山-日影乗鞍-日影 (2016.11.25)


☆期日/天気/山行形式: 2016年11月25日(晴) 日帰り単独雪山ハイク
☆地形図(2万5千分1): 与瀬(東京15号-1)
☆まえがき
  高尾山のガイドマップを見ていたら、小仏城山頂上から北東ヘ派生している尾根の背に破線ルートがあることに気が付きました。
マップには「指導標のないバリエーションルート」と記されています。

  ネットで検索してみたら、この尾根は小仏城山北東尾根と呼ばれて、幾らかは人通りがある事が分かりました。
2万5千分1地形図に 621m と記入されているピークは「日影乗鞍」と呼ばれ、末端に近い所に 446m と記入されている所には「御料局三角点」があり、ヤブを漕いだりルートファインディングをしたりする必要はなさそうです。

  薬王院参道の喧騒を迂回して高尾の中核部に直行できるのが魅力なので、一度トレースしてみたいと思っていたところ、11月下旬には考えられない記録破りの大雪が降りました。
テレビで流れたニュースによれば八王子あたりで 10cm も積もったと言うことでした。
紅葉の高尾の雪景色、と言う稀有の景色が眺められる千載一遇のチャンスを逃してはならじ。
急遽雪山歩きの準備をして出かけました。

  歩いたルートは、高尾山口-高尾山-一丁平-城山-北東尾根-日影バス停でした。
季節外れの寒波が運んできた清透な大気のお陰で、これまで見たこともないクリヤーな視界が広がり、高尾山の大展望台、もみじ平、一丁平、城山などからの山岳展望を楽しみました。

  城山北東尾根のルートは明瞭で昔の山道の雰囲気が残っている好ルートでした。
雪解けと落ち葉で滑りやすくなっていて足許に注意が必要だったものの、静かな尾根歩きを楽しむ事ができました。


  日影バス停は高尾駅と小仏の間に運行されているバス路線の中間にあり、上り下りとも30分毎にバスが通過します。
入山と、下山と、いずれにも利用価値の高いアプローチルートが見つかったような気がしています。

一丁平展望所の眺め    (画像をクリックすると拡大スクロール)
☆行動時間
    宮崎台[8:04]=(東急線)=溝の口=(JR南武線)=分倍河原=(京王高尾線)=[9:19]高尾山口/高尾ケーブル駅[9:37]=(高尾山ケーブル)=[9:43]高尾山(9:48)-飯縄権現堂(10:10)-薬王院(10:13)-奥多摩展望所(10:30)-高尾山(10:34/50)-もみじ平(11:00/06)-鞍部(11:24)-一丁平(11:41)-一丁平展望台(11:45/51)-城山(12:13/45)-北東尾根入口(12:51)-東京農工大同窓会記念林標識(13:05)-日影乗鞍/620.9m図根点(13:15)-御料局三角点(13:45/50)-車道(14:17)-(14:25)日陰バス停[14:43]=(京王バス)=[15:01]高尾駅北口/軽食/高尾駅[15:49]=(JR中央線)=八王子=(JR横浜線)=長津田=(東急線)=[16:57]宮崎台

☆ルートの概況
   今年の秋は晴れが少なかっただけでなく気温の変動が激しく、自律神経系の働きが悪くなってきた年寄りにとっては体調管理の難しい季節でした。
西伊豆歩道を歩いたあと、思うような山行もできないまま、一月近くも山行間隔が空くこととなりました。
どこでも良いからひと山歩いておかない足腰が衰弱して山を歩けなくなってしまう、と心配していた所へ冬の先駆けとなる寒気の南下があり、それと示し合せたかのようなタイミングで本州南岸沿いを低気圧が通過。
まだ11月と言うのに南関東に記録破りの大雪が降ることとなりました。

  この時期、高尾山の尾根筋は紅葉の季節です。
手近な高尾山で紅葉に彩られた雪景色が見れる、と言う稀有の機会を活かそうと、急遽雪山歩きの支度をして出かけました。

  高尾は毎年何回かは行っている山です。
アプローチの電車の乗り継ぎもほとんどルーチンになっていて1時間ちょっとでスンナリ行き着いてしまいました。

  高尾山ケーブルカー清滝駅前広場は除雪されていましたがまわりの家並みの屋根の上や森には雪が積もっていて紅葉の赤と雪の白とで紅白模様になっていました。


  通常、15分間隔で運行されているケーブルカーは7分間隔のピストン輸送モードになっていて、大して待たされることもなく山の上に上がりました。

  山の上の駅前広場には大勢の観光客が来ていて都心の駅と変らない賑わいでした。

  駅前広場の左手の階段から先が薬王院の参道が始まります。
木の枝に積もった白い雪と、紅葉の赤とで、珍しい景色になっています。

十一丁茶屋展望所の眺め    (画像クリックで拡大)

  僅か進んで尾根の背に出た所は十一丁茶屋で、店の左脇に展望所があります。
展望所の柵に寄ると相模野が見え、その先に相模の海が光っていました。

  参道は街履きの靴で来た観光客が安全に歩けるよう、きれいに除雪されていました。
まだ時間が早かったせいか、思ったほど混雑していなかったのでのんびり歩きました。

  男坂の登り口まで来て石段を見上げるときれいに除雪され、誰でも安全に登降できるようになっていました。

男坂上の森の雪景色    (画像クリックで拡大)

  石段を上がった先の平らな道は左側に杉の大木が林立しています。
谷窪の上部を通り過ぎる所には杉の枝や紅葉した闊葉樹の枝に雪が乗って、きれいな雪景色になっていました。

  仁王門はロープを張って通行禁止にしてあったので左脇の垣根の外側の道を進み、札所の前に着きました。
札所に向かい合った石段を上がると飯綱権現堂で、その脇からもう一段石段を上ると薬王院があります。

  薬王院の背後に回り込むと不動堂。
その横手あたりから高尾山の登山道に変わり、大きめの祠と言った感じの浅間神社の横手を通って頂上に向かいます。

  木の根を踏みつけから守るためか、このあたりは一面木の板を敷き詰めたプラットフォームになっています。
  人の通る所は除雪されていますが雪解け水が凍結気味のため油断できず、人に踏まれていない雪の部分を歩く方が安心だったりします。

奥多摩大岳山    (画像クリックで拡大)

  土道に変わった道を緩やかに登ってゆくと右側に大きな公衆トイレがあります。
建物の奥手の脇のフェンスに寄った所は隠れた奥多摩展望所です。

立ち寄って柵の脇から眺めると新雪の山並みが連なっている中ほどに尖った頭を上げている大岳山が目立ちます。
  公衆トイレの前から左手へ緩やかに登ると高尾山頂上広場です。
降雪中の昨日もかなり大勢の人達がが来ていたようで踏み固められた雪がツルツルになっている所があり、うっかり歩くとツルッと滑ります。

  広場の隅の野外ベンチの雪を払い除けた所へ、ゴアテックスの手袋を並べ、その上にお尻を乗せて小休止しまた。
  高尾山頂上広場の西端にある大展望台は、正面の富士山が、左脇に大室山、右脇に道志の山並みを従え、堂々として美しいのですが昼を過ぎると逆光になり、パッとしなくなってしまいます。

大見晴台の眺め    (画像クリックで拡大)

  厳冬期以外は霞や靄が出やすく、眠たい眺めになってしまうことが多いのですが、この日は時間が早かったのと、大気が澄んでいたのと、好条件が組み合わさり、これまでにない鮮鋭な展望が得られました。

  柵の真ん前に据えた三脚に500mm レンズ付きデジイチを載せているおニーサンがいました。
"山屋の誼" でファインダーを覗かせてもらったら、蛭ヶ岳頂上小屋の窓ガラスまでバッチリ見えたので驚きました。
先程までは甲斐駒や農鳥も見えていた、と言うことでした。

  存分に展望を楽しんだあと頂上広場の西端から登山道に進入し、城山に向かいました。

雪の登山道に入るとたちまちまわりの人影が激減し、あたりが静かになりました。

坂を下った所にあるカエデの鮮やかな紅色がきれいでした。

  緩く登り返して行くともみじ平の茶店が見えてきました。
茶店に入る気はなかったので左下のトレールに入って進んだらすぐに茶店の下の小平地に着きました。
道端に並んでいる野外ベンチの正面は富士山と丹沢連峰です。


  座っている人に断り、ちょっとベンチの前に出させてもらって撮ったのが下のパノラマ写真です。
 
もみじ平の展望    (画像クリックで拡大)
  もみじ平から先はルート沿いの雪がふえ、歩いている人も雪山装備の山屋さんだけになりました。
  大気が乾燥して頭の上に真っ青な空が広がり、爽快です。
風がないのと11月の日差しのお陰で寒くもありません。

  凍っているのか、融けかかっているのか分からないため、いつ滑ってもおかしくないトレールを慎重に踏んで行きました。
場所によっては道の縁に沿ったまだ踏まれていない雪の中を歩いた方が安全でした。

やがて行く手に城山が見えてきました。

  坂を下り終わり、ほとんど平らに進んでゆくと大垂水峠から山腹を横巻きに通ってきた道が出合いました。

  初めに立てた計画では、この道を使って主稜に到達することにしていたのですが、もしその計画のままだったら高尾の展望台や、もみじ平で見てきた素晴らしい展望と出逢うことはできなかったことになります。

  このあたりが高尾山と城山の間の最低鞍部で、その先から城山に向けた登り返しが始まりました。

  ひと登りでまわり開けて一丁平に差し掛かりました。
やがて東屋や公衆便所が散在している園地を通過。

  園地の先から左手へ登ってゆく所は北斜面のせいかシッカリ雪が積もっていて、まさに「晩秋に出現した厳冬期の景色」です。

一丁平展望所の眺め    (画像クリックで拡大)

  坂を登りきった所が一丁平の展望所です。
西から南への視界が開け、ページ冒頭のような展望が得られました。

  左手が谷になっているため、大山と、その前に連なっている東丹沢の山並みが良く見えました。

  富士山は少し霞んできましたが、風が出てきたようで、雪煙が上がり始めています。

  一丁平から城山へはもうひと登りしなければなりません。
久し振りの山道で少々疲れてきたのでペースを落とし、あとから来た若い人達にはドンドン先に出て貰いながらじわじわ登り続けました。

  ペースダウンしたお陰でバテることもなく城山頂上広場に登り着きました。
小仏城山は高尾山域の奥まった所ですが昔から茶店があって冬でも営業しています。

  広場の北寄りの外れ、木彫りの天狗像の前にある野外ベンチが空いていたので、その上に積もっていた20cm ほどの雪を払い除け、用意してきた発泡スチロールの座布団を敷いて腰を下ろしました。

十一丁茶屋展望所の眺め    (画像クリックで拡大)

  谷向いの正面は八王子城山です。
その手前の左側には、今日歩きに来た北東尾根の最高点である日影乗鞍(621m)が見えています。

池袋や西新宿の高層ビルも見えているのでしょうが都心の方はスモッグが立ち込めて良く分かりません。

  景色をオカズにゆっくり飲み食いをしながら疲れを癒やしました。

十分休んだあとザックを背負いあげ、北東尾根に向かって出発。
電波塔と公衆便所の間から始まる日陰沢林道に進入しました。
このあたりは茶店の車が通った轍のあとだけ雪が消えています。
  林道上部の日の当たらない所にはまだ雪が積もっていて、その上に散り敷かれた紅葉の絨毯が奇麗でした。

  左手に回り込んで高度を下げたあと右手に回ると南斜面にかかり、雪が消えた林道の路面が露出しています。

U字カーブから僅か進んだあたりで尾根の背との高度差が少なくなってきた所に、左に分岐している歩道がありました。

  道標は立っていませんが、地形図と道の樣子とを照合すれば、ここが北東尾根の入り口に違いないと判断しました。
  北東尾根ルートに入るとすぐ、杉林の中の雪道になりました。
  道形明瞭というか、結構な人数が歩いた形跡がありましたが、凹んだ所に水が溜まっていたり、日影の所は凍結気味になっていたりして見かけほど歩きやすくはありません。
それでも、近頃よく歩いている薮山ルートに比べれば格段安楽です。

  気温が上がったせいで、枝から落ちてきた雪の塊がドサンと首筋にあたってビックリしました。
ときどき周りでドッサーンと落ちてきた雪の音がするようになり、ヒヤヒヤしながら進みました。

図根標点 上長房    (画像クリックで拡大)

  ひとつコブを越えた先でもう一度登り上げた所に立っている木に「図根点標 上長房」と記した木札が下がっていました。
道の向かい側の高みの雪の中に、標石(621m)が頭を出していて、日影乗鞍の頂上であることを確認しました。

  標石の先をやや急に下降してゆくあたりは、右側が伐採あとにできた自然林(?)で、幾らか明るくなっています。
下りきった鞍部は尾根の北側も自然林になっていて送電線鉄塔が立っていました。


  鞍部の先を僅か登った先から暫く緩やかな下りが続いたあと急降下。
浅い鞍部からわずか登り返すと細長い高みに上がりました。

御料局三角点    (画像クリックで拡大)

  端末が表示している現在位置からみて御料局三角点の間近まで来ていることが分かりました。
  高みで熟女3人組が休憩していたので、「御料局三角点は何処ですか?」と訪ねたらキョトンとした顔をされました。
  しかたなく、端末の画面を見ながら前進し、このあたりに違いない思った場所でまわりを見回したら右横の木の根方の雪の中に四角い標石が頭を出していました。

  あとからついてきた熟女組と雪を掘り返して確認した御料局三角点標石(446m)は、通常の三角点標石よりひと回り小さく、北面に「御料局三角点」、その反対側の面に「宮」の字を図案化したマーク(鍋蓋に達磨とでも言えばよいか?)が刻まれています。
  御料局三角点の先はかなり急な下降が暫く続きました。
雪解けの水と落ち葉でかなり滑りやすくなっていて要注意でし、うっかりスリップして尻餅でもついたらズボンを泥でベトベトにしてしまいそうです。
  前の夜に行った装備点検で、雪山用ストックのシャフトが曲がって使い物にならなくなっている事が分かったのでその代わりに以前山スキーで使っていた Black Diamond のストックを持参していました。
このストックはよくあるシャフトを回して固定するのではなく、旋回式クランプで固定します。
凍結に弱そうですが歩きながら長さを簡単に調節できる所は便利と思いました。

  足の筋肉が弱くなると昔のようにシッカリ踏み込んで靴底で地面をグリップできません。
ルート脇の木の根をステップにしたり、藪に捉まったり、あれこれ工夫してスリップを防ぎながら下り続けていたらようやく尾根の傾斜が緩みました。

  やがて尾根上のコブの手前の僅かな鞍部に差し掛かって右に曲がり、尾根の背を外れて日陰沢側の斜面に入りました。
 

  水源保安林の標識を見ながら左手へ回りこんでゆくとやや藪っぽくなりました。
尾根の入り口からここまで危なさそうなところは全くありませんでしたが、このあたりだけは道形がごく細くなっていて、雪が深いときなどうっかり踏み外すと右下の藪の中に滑り落ちる可能性があります。

  固定ロープが張られた沢溝のような所を横切って行くとやがて右下から沢の水音が聞こえてくるようになりました。


  道が僅か右手にまわって行くと行く手に日陰沢の流れが見えてきました。
飛び石伝いに流れを渡った所は日影沢林道で、林道に上がった所には、左のようにニリンソウの保護を訴える看板が立っています。

  林道を僅か進んで橋を渡ると小仏へ通じている都道516号線に出合いました。

  道路に出ると前方に圏央道インターチェンジの巨大な道路橋が見えました。
すぐに JR中央線線路の土手に突き当たり、右手に曲がった所に日影バス停のポストが立っていました。
  写真に写っているのは小仏行きバスで、高尾行きのバス停ポストは向かって左側の石垣の下に立っています。

  バスが小仏で折り返してくるまで約15分待ちましたが、予定より1時間早く高尾駅前に着きました。
駅前通りに「新そば」の幟を出していた蕎麦屋に入り、大きな海老天を載せたそばを食べて帰りました。

<ルートの詳細>




  ヤマレコの山行報告






  詳細ルートマップ



  GPX ダウンロード

 
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☆おわりに

   高尾は歩き尽くしたような気がしていましたが、細かく見ればまだ歩いていない部分が沢山残っていた、と言うことに気が付きました。
足腰立つうちは楽しめそうです。

  始めてゴア登山靴で雪山を歩いてみました。
靴下が濡れるようなことはなかったものの、防水層の外側まで水が滲み込んでくると足が冷たく感じるようになりました。
やっぱり、雪山は手入れの良い革登山靴が一番、と思いました。