徳並沢ノ頭-大志戸山-古部山-三角コンバ
(2004.4.29)



☆期日/山行形式:
2004.4.29 単独 日帰り

☆地形図(2万5千分1): 大菩薩峠(甲府2号-4)、笹子(甲府3号-3)石和(甲府7号-1)

☆まえがき
    大菩薩日川尾根各支稜のトレースも残り少なくなった。
木の葉がまだ広がり切らず、見通しが利くうちにもう一回歩いておこう思っていたのだが、冬に手を付けたPCオーディオプロセッシングのひと区切りにと、アクティブスピーカを更新してみたら、安物に似合わぬ良い音を出してくれたのにビックリ、あらためて棚から引っ張り出してきたLPレコードを、とっかえひっかえ聞いたり、デジタル録音したりしているうちに、3週間近くもの山行間隔が開いてしまった。

  これ以上山に行かないでいると足腰がダメになってしまう恐れが出てきたのでゴールデンウイークの初日に、西/東大志戸山から古部山の間を繋ぐ尾根を歩きに行くことにした。
南日川尾根の未トレース部分では、もっとも奥手にあたる場所だが、甲斐大和(640)から古部集落奥の農道終点(825)を経て徳並沢ノ頭(1116.7)に登り、西大志戸山(1140)、東大志戸山(1115)、pt1292を経て、古部山南肩で主稜に合流し、古部山(1305)、1414m三角点峰から三角コンバ(1430)を経て嵯峨塩橋(1160)に下山する事にすれば、登降ルートが既知なので気分的に楽だ。
  もし早い時間に下山できれば木賊の栖雲寺(1040)のすぐ下手にある天目温泉(920)でひと風呂浴びて帰ることもできる。
  幸い、天気図の推移は理想的で、予定日には、この春最強の移動性高気圧が本州上空を覆ってくれる見込みとなった。
MtFuji, Misaka and Sasago Mountains
東大志戸山と古部山の間の1120m 圏小ピークから南へ、日川谷対岸の笹子連山、三ツ峠などの御坂連山、さらに富士山。

☆要所の写真と概略の記録
    日帰りのため準備は簡単だったが、時期的に冬装備と春装備の入れ換え時期にあたったため、靴やアンダーウエアなどを入れ換えるのに時間を費やし、前日の午後から夜まで掛かった。

  久し振りの早起きをして駅に行き、6時前の電車に乗った。
ゴールデンウイークの初日とあって、盛り場での夜明かしから帰ってきた者と、これから遊びに出かけようとする者とが乗り合わせた形となり、意外に混んでいた。

  八王子駅では、大勢の人の流れに乗って階段を昇り降りしたら、6時55分の甲府行き電車に飛び乗れてしまい、予定より30分も早く甲斐大和駅に着いた。
いつもは人気の少ない駅だが今日は珍しく5、6人のパーティが数グループ、全部で20人ほどのハイカーが降りた。
 いずれも景徳院あたりか湯ノ沢峠方面へ向うようで "車がどうしたこうした" と言っている。
その人達の間を通り抜けて駅前の道るとすぐ右に折れて100m ほど、勝沼寄りに歩いた所にある跨線橋を渡って古部集落へ向った。
今日は、一人くらい徳波沢ノ頭に登る者がいるかも、と思って後ろを振り返ったが誰も来ない。
金久保の新緑
  古部集落の火の見櫓の十字路へは、西光寺の階段を上がり、本堂の右脇を通り抜けて坂を上がったらすぐだった。

  集落の背後に広がる果樹園一帯は新緑に被われ、冬とは打って変わって和やかな雰囲気になっている。
尾根上の林の梢越しに徳並沢ノ頭がチョッピリ顔を覗かせていた(左)。

この前と違って一番上の車道よりひとつ手前で右手に分岐している車道に入り、農道 金久保線と記した標柱のある終点から尾根に上がってみた(下左)。
 
金久保農道末端
  果樹園と山の境の道に入ってすぐ、右手に上がって見たら僅か20m 程で尾根の背に乗った。
殆ど歩く人がいないようでかなり藪っぽかったが2、300m ほど進んだ所で左下からの踏跡を合せると、藪が減って歩きやすくなった。
  冬の間は伐採作業員だけしか通らなかったのが、春になって、ハイキングパーティも出入りする様になったようで、昨年12月に比べて格段に人跡が濃くなっている。

  ひと登りで伐採地の縁に出た。
徳並尾根東面の伐採作業は引き続き行なわれているようで、搬出ケーブルと尾根道が交わる所には "ケーブルが動いた時に危険だからナイロンロープ沿いに歩いてください"、と記した板が掲げられ、ロープが張られている。
徳並沢ノ頭頂上
  伐採地は尾根上940m あたりにある小ピークの下まで広がっていた。
足許は伐採で荒廃してしまっているがそれと引き換えに遠くへの視界が広がり、笹子連山から三ツ峠方面への眺めが良くなっている。
  小ピークを越したあたりから尾根が痩せ、岩稜が出てきたりするがまわりが新緑で雰囲気が和らぎ、二度目だと言う事も手伝ってさして緊張する事もなく登り続けて頂上直下の岩場直下に着いた。
  ここでは前回と違って踏跡に従い、左側の斜面を巻き上げてみたが足許が不安定な上に手掛りが少なくかえってヒヤヒヤ物だった。
ここは岩稜を正面突破した方がずっと容易い。

芽萌きの尾根
  徳並沢ノ頭頂上は、芽萌きの潅木に囲まれ、穏やかで落ち着いた雰囲気が漂い、絶好な休息場になっていた(上左)。



  東北方、真近かにある西大志戸山へは、いったん急降下した鞍部から登り返す。
上りついた頂稜の南端には、"西大志戸山" と記した、幅10cm、高さ20cm 程の木札が枝に掛けてあるだけで、それ以外何もない寂峰だった。

  西丹沢の菰釣山と似通った細長い頂稜を持つ山だったが、狭い切り開きの両側に立ち並んでいる樹木が芽萌きになっていてとても良い雰囲気を醸していた(左)。


  頂稜の北端からやや急な斜面を下って東大志戸山に向う。
左下の下道沢で山仕事をしているようでチェーンソーのエンジン音が聞こえてくる。
  今回歩いた範囲では、この辺りが唯一、ルート判断を要した部分だった。

徳並尾根と富士山
  尾根が急降下しながら右に曲がっているので意識的に右の方に下降してゆかないと下道沢の上部に引っ張り込まれる惧れがある。


  鞍部から登り返して立った1110m 圏の小ピークは白蛇沢から上がってくる支稜の頭で、尾根上に踏跡が付いている様子だった。
  徳並尾根の蔭から富士山が姿を現した。
大気は、秋の様に爽やかで澄んでいる。
藪道

  この辺りでは稜線の左側は混交林だが、右側は桧の植林になっている。 桧はまだ視界を妨げるほどまでは育っていないので眺めは良いがその代わりに一帯がかなり藪っぽく、踏跡も分かり難い所がある(左)。
西大志戸山と南アルプス連峰
  緩く下って登り返した1120m 圏の小ピーク上で休憩した。
来し方を振り返ると西大志戸山の平頂が大きく堂々とした姿で横たわり、その先の方の中空に "南の巨峰達" が浮かんでいた(左)。


  古部から白蛇沢を遡ってきた大志戸林道が谷の上部を横切り、音沢ノ頭のコルを越えている様子が良く分かる。

  笹子連山の背後に頭を出している滝子山の尖がった双子峰が目を引く(下)。
笹子連山と滝子山
1292m 独標
  休憩地点から主稜まで、さらに250m 程の標高差を登り上げなければならない。

  所所に平坦な場所があって大して厳しい登りではないのだが、山行間隔と歳のせいで、思ったより厳しい登りとなった。
元来は肺活量が不足気味な体質で、普通なら息が上がって休みたくなるのに、今回は足腰の方が先に痛んでくる。 明らかに足腰の筋力が弱っている証拠だ。

  伐採地の中の急登を終え、緩やかになった尾根を進んで行くと1292m の独標小ピークに着く(左)。
古部山南肩
  さらにひと登りで小広い切り開きのある小ピークに着いて主稜に合流した(左)。

  藪っぽい踏跡はここまでで、あとは真っ当な登山道になる。

古部山頂上広場
 苦しがり始めた足腰の筋肉を労わりながら緩やかな登りを進ん行くと、なだらかな高みの切り開きに面した樹木に "古部山" と記したプレートが掛かっていた(左)。

"平成2.12.27井の頭" と記してあるプレートは、白塗りの20cmx30cmほどの立派な物だ。

  足腰は痛んだが程よい時間にここまで来られ、ホッとして休む。
道標
  古府山から北隣の1413.6m 三角点峰までは道が良くて藪もなく、要所に道標まで立っていて殆ど一般ルートと言って差し支えない状態だった。
早春の頂稜


  標高が1350m を越すこのあたりは、まだ早春の雰囲気で、切り開きの両側の樹木はやっと芽萌きが終わって黄緑の葉を広げ始めたばかりだ。


  連休の初日だと言うのにこんな奇麗な山を独り占めさせてもらって本当にありがたいと思いながらユックリ歩いて頂稜の最期の部分を楽しむ。
三角コンバ
  左に直角に折れ曲がってゆるやかに上っていった所に三角点標石があった。
3月に沢筋を間違えて登りついた思い出のある三角点だ。

  ここで右に直角に折れて北に向い、20分ほどで三角コンバに着く。
ミズナラ(?)の巨木の脇に "宮宕山-嵯峨塩橋 YHC" と記した道標と、"SHC 井の頭 92.12" と記した標柱とが立っている。
北の境沢ノ頭を越し、深沢峠から嵯峨塩鉱泉へ降りてみたいような気もしたが、疲れてもきたし、時間もそれほど早くはないので計画通り嵯峨塩橋に降りる事にした。
嵯峨塩橋
  下降路は前回と同じで、下の道が見えてきた最後の急な所で一時道が分からなくなったが尾根の背の左手を4、50m 真っ直ぐに下って行った所でまた出合い、左へ斜下降して嵯峨塩橋脇に降り立った。


  この橋は塩山市と大和村の境で、その標識が橋に取り付けてあるが、今は町村合併の話が進んでいるらしい(左)。

  この後は木賊の栖雲寺脇のバスターミナルまで、車道をブラブラ歩いた。
道端の民宿の庭先ではちょうど桜が満開だった。

  風呂に入って帰るにはちょっと時間が不足だったので公衆トイレで大キジを打ったあと、顔を洗って汗を流す。
3時のバスが上がって来るまで、三十分以上も時間があったがベンチでノンビリ待つ。
谷の出口の方に富士山が見えて良い眺めだ。
こういう所では何もしないでただ座っていても、全く退屈したりイライラしたりする事がない。

  定刻が近づくと派手な塗装の村営バスが上がってきた。 100円均一という時代離れしたバスだが、発車した時の客は地元の男と二人しかいなかった。
天目温泉で4人ほど乗ってきて、何時もなら大抵そのまま甲斐大和駅まで行くのだがこの日は違っていた。
景徳院前と片手切りのバス停でそれぞれ10人を越すハイカーが乗り込んできて通路に立つ者が出てくる程になって駅に着いた。

  この時間に甲斐大和駅を出る上り電車はちょうど良いタイミングで、休日でもまだ沢山の空席が残っているが、笹子、大月、猿橋と進むに連れてドンドン混んできて上野原あたりからは通路に立つものが出てくるほどとなる。
かなり混雑した状態で高尾に着き、八王子、長津田で何時ものような乗り継ぎをして早い時間に家に帰り着いた。


☆タイムレコード

宮崎台=長津田=八王子[7:05]=[8:05]甲斐大和(8:10)-車道終点(8:40/50)-富士見晴点(9:25/30)-徳並沢ノ頭(9:50/10:00)-西大志戸山(10:10)-東大志戸山(10:30/35)-1160m 圏小ピーク(10:45/11:00)-1292独標ピーク(11:00)-古部山南肩(11:30/40)-古部山(11:50/12:00)-1414m三角点峰(12:20)-三角コンバ(12:40/55)-嵯峨塩橋(13:25)-車道脇の東屋(13:40/50)-(14:10)栖雲寺[15:00]=(村営バス\100)=[15:20]甲斐大和駅[15:26]=[16:32]高尾=八王子=長津田=宮崎台


☆おわりに

  大菩薩日川尾根南端部のトレースも終わりに近づき、古部山南肩以南の端山部分を残すだけとなった。
好展望の静かな山が多かった。
山火事のあった甲州高尾山でさえ、そのお蔭(?)で素晴らしい展望があった。
勝沼付近の山岳展望、日川谷の景徳院と天目の温泉など、山麓も魅力に富んでいた。

  中高年登山ブームとかで、百名山を始めとする有名な山が大混雑している今時、このように静かで奇麗な山が、手近な所に残されているのは実にありがたい。

残された部分を紅葉の季節に歩くのが楽しみだ。