牛奥 源次郎岳から恩若峰を経て塩山へ (2003.11.17)
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☆期日/山行形式: 2003.11.17 単独、日帰り
☆地形図(2万5千分1): 大菩薩峠(甲府2号-4)、塩山(甲府6号-2)
☆まえがき
紅葉が終わって木の葉が落ちた。
藪山シーズンの初山行として、宿題になっていた源次郎岳から恩若峰への尾根を歩いてみた。
7月に大菩薩 日川尾根に行ったときこの尾根を通って塩山に下山する計画にしていたのだが天気が芳しくなくて、手近な嵯峨塩鉱泉にエスケープしてしまったため、歩き洩らしたルートだ。
日川尾根は、以前から物好きが歩く藪ルートだと言われているようだが、牛奥から上日川峠を乗り越す舗装車道が開通したあと、ほとんど見捨てられた感じで藪
が深かった。 源次郎岳から恩若峰への尾根は支脈だから一段と人跡稀だろう。
ある程度の藪潜りは不可避と予想したので、時間的な余裕を確保するため、朝一番の
特急アズサとタクシーを利用して、手早くアプローチする事にした。
行動計画のあらましは、甲斐大和駅(645)からタクシーで牛奥 嵯峨塩鉱泉(1215)
に入り、嵯峨塩深沢林道(1450)、源次郎岳分岐(1535)を経て源次郎岳(1476.6)に登頂。
西に延びる尾根を、PK1255(源次郎平)、PK1050(萩原山?) と辿って恩若峰(982.6) まで縦走。
山麓の文殊院(515)に下ったあと、塩山駅(410) まで歩いて帰るというものだった。
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嵯峨塩館前から10分程登った所で眺めた富士山 |
実際に歩いて見た所では、源次郎岳から恩若峰までのルートはあまり踏まれていず、踏跡と言った方が当っている程度だったが要所にビニールテープのコース
サインがあったほか、数少ないながら地元山岳会による道標もあって迷うような所はなかった。 心配していた藪が殆どなかったため、予定より短時間で歩き抜ける事ができた。
ルート上で注意すべき部分としては、源次郎岳の下りの急な斜面の途中にある露岩の左横を捲き下る所で足場の悪い踏跡の上に積もった落ち葉でスリップする恐れがあったことと、恩若峰からの下降路で、見通しの利かない場所にある文殊院への分岐に道標がないため、判断を誤りやすい事のふたつだった。
後者では注意不足のためルートの判断を誤り、文殊院ではなく、尾根の北側のの中萩原に下山してしまった。
しかし、そのお蔭で果樹園越しに、乾徳山、小楢山から帯那山を経て白根山三山に至る広大な展望に接し、武田信玄の戦勝祈願跡の滝本陣を見て帰ることができ
た。
☆タイムレコード
宮崎台[6:27]=[6:44]長津田[6:49]=[7:23]八王子[7:29
アズサ]=[7:55]大月[8:15]=[8:34]甲斐大和[8:50]=(Taxi
\3290)=[9:05]嵯峨塩館前(9:15)-林道(9:55/10:02)-源次郎岳分岐点(10:25)-源次郎岳(10:45/11:05)
-源次郎平(1140/45)-標高差6、70mのまとまった下降(12:15-20)-荻原山(12:30/50)-恩若峰(13:17/25)-中萩
原滝本院(14:05/15)-広域農道十字路(14:50)-(15:05)塩山駅[15:09]=[16:32]高尾=八王子=長津田=宮崎台
☆概略の行動記録と要所の写真
一日遅らせたお蔭で移動性高気圧の前面に入り、半年振りの大快晴に巡り会う事ができた。
嵯峨塩鉱泉入口向かい側の擁壁にある目立たない階段を上がった所に源次郎岳へ80分、富士山展望点まで10分と記した道標が立っている。
富士山展望点では上に見るような奇麗な富士山が眺められた。 木の葉が落ちて見通しが良くなった林の上空には澄み切った青空が広がっていた(下左)。
落ち葉に被われた薄い踏跡を追って林の中を登って行くと 舗装林道に出る。 林道の向かい側に道標があった(下右)。
全体にあまり踏まれていない中で、そこから源次郎岳頂上までだけは良く踏まれた明瞭な山道になっていた。 林道を車で上がって源次郎岳頂上へ往復す人は結構多いようだ。
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山歩きには最高の好天日だが週日のため人っ子一人居ず、山中静まり返っている。
突然足許から飛び出した鳥の羽音にビックリした。
上日川峠から南下してきた道と出会い、左に折れてひと登り、さらに細尾根を進んで鞍部から登り返すと源次郎岳の頂上だ。
三角点標石の横に山梨百名山の標柱が立ててある(左)。
樹木に囲まれて展望は良くないが北の方に大菩薩嶺方面が見え、南面の樹木の隙間には富士山が覗いていた。
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源次郎岳から恩若峰へのルートは、まず200m 程の急降下から始まる。
露岩の左横の急な傾面を葛篭に捲き下る所は、か細い踏跡に落ち葉が溜まっていて足場が決まらず、今にもスリップしそうな感じがして、気持ちが悪かった。
急降下が終わると緩やかな細尾根に乗る。 最低鞍部からひと登りで上がった標高1250m 台のピークは、この尾根上の数少ない明瞭な突起で、"源次郎平"
と記したプレートがあった(左)。
頂上東側の肩は稜線の北斜面が崩壊気味のため視界が良い。
奥秩父の木賊山から甲武信岳あたり(下左)と、大菩薩嶺(下右)が眺められた。
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緩く下って行った先からひと登りすると西隣の1260m 圏ピークに上がる。
そこから先は常緑樹の多い密生自然林の中を小刻みに上下しながら進んで行くようになり、現在位置の判断が難しくなる。
僅かに、高度差60-70m 程の纏まった下りがあって源次郎岳と恩若峰のほぼ中間の地点に達した事を確認した。
右手の谷間の先にゴルフ場が見えたあと、そちら側が桧林に変わって里山の雰囲気になる。
右手に分かれてゆく良い道を見送って直進すると僅かな高みの頂上に、昭和45年に行なわれた植林作業の要目を記した白い表示板が立っていた(左)。
1050m 圏のこのピークは地形図に山名はないが、表示板には
"萩原山" と記されている。
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ここから恩若峰まで、尾根が大きく屈曲しているため、右に行ったり左に行ったりするようになる。
視界がないこととあいまって方向感覚があいまいになる。
尾根の左側に入って崩れかけた所を横切ったあとふたたび尾根上に戻る。 笹が被っている所を過ぎてふたたび左斜面に入るとやや藪っぽくなる。 低小な潅木の中にはツツジが多いようだ。
恩若峰頂上の裏側には右手に分かれてゆく道がある。 それを見送って正面の斜面を直登し、ひと頑張りで恩若峰の頂上に着いた。
まん中に三角点標石のある頂上広場は常緑樹を主体とする自然林に囲まれて展望はない。
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あたりに人気は全くないが、鳥か獣を追い払っているらしい爆発音、車のエンジン音、さらに鉄道の音など、色んな音が聞こえてきて完全に里山の雰囲気だ。
ひと休みして下山に掛かった。 やや急な下りが一段落した所で左斜面に入って行く道が分岐していた。 一旦そちらに入ってみたものの、あまり踏まれている感じがないので元に戻り、尾根上を進む踏跡を偵察した。
ビニールテープが木の枝に巻きつけてあるのが見付かったので、谷より尾根のほうが間違いなかろうという選択をし、尾根上を進んだ。
間もなく桧林の中の急な下りになった。 ルートはあまり踏まれていず、所々で不明瞭になる。
間伐が行なわれていないため、木の密度が高くて視界が得られず、下の方がどうなっているのか様子が分からない。
ここ二週間あまり、新バージョン Linux のテストのため、家に篭り続けていたため、錆着き気味になっていた脚の筋肉が悲鳴を上げはじめた。
林の僅かな隙間に腰を下ろして小休止しながら凝り固まってきた筋を揉み解す。
一段と近くなった下界の物音に励まされて急降下を続けてゆくと尾根を外れて右下の谷窪に入った。
先の踏跡が対岸の斜面を斜上しているのでちょっとまずいかも、と思ったがよく見ると窪の底にウッスラと人跡がある。
かすかな踏跡を拾いながら 100m あまり進んだ所で突然果樹園の縁に出て前方に広大な視界が開けた。 長時間、暗い林の中を歩き続けたあと、突然、眩い景色の中に飛び出してしばらく呆然となった。
果樹園の向うの重川谷の先に山並みが連なっている(下)。
一番右手の方に鋭く尖った頭を持ち上げている乾徳山から大ダオの鞍部を隔ててトサカ、ゴトメキへの連なり。 その左手、正面には小楢山から帯那山。 さらにその左手に視線を移してゆくと、西の遠い空の逆光の中に白根三山がスカイラインを描いていた。
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中萩原 滝本陣上の果樹園に飛び出すと目の前の重川谷の先に
乾徳山から白根三山まで、甲府盆地を囲む山々への大展望が広がっていた |
大展望をカメラに収めたあと、まわりを見回すと、道端に "桃源郷めぐり 中萩原" と記した道標が立っていた。
あらためて山から出てきた所を見ると、"恩若峰 源次郎岳登山口"
と記したプレートが掛けてあった。
すぐ下手に赤塗りのお堂が立っていた(下左)。 お堂の軒下には、"滝本陣"
と記した額が掛かり、道端に "武田信玄戦勝祈願跡" と記した道標が立っていた。
その下の角には、バス停まで700m 、塩山駅まで3Km と記した道標が立っていた。
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ちょっと遠回りになるがバス停の方に行ってみることにした。 山の方を振り返ると果樹園の奥手に紅葉を纏った恩若峰が穏やかな姿で立っていた。
大通りに出た所にはバス停ポストがなかった。
どうせバスの本数は少ないだろうし、駅までそれほど遠くはなさそうだ。 まだ時間が早いからユックリ歩いてゆけば足腰のクールダウンにもなるだろう。
30分ほど歩いた所で文殊院から降りてきた道との十字路に出た。 右に折れて坂を下り、重川を渡るとひと歩きで駅前広場だった。
切符を買ってホームに降り、スパッツを脱ぐか脱がないかのうちに上り電車が来た。
お蔭で、ゆっくり沿線の山々を眺めながら鈍行列車の旅を楽しんだあと、早い時間に家に帰り着いた。
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☆参考情報 (1) ルートは終始密林の中で殆ど展望もなく、いささか単調だった。 率直に言って物好き向きのルートだと思った。
しかし、登り始めで見えた富士山と、中萩原の果樹園から眺めた乾徳山から白根三山までへの広大な山岳展望は、それだけでも見に出かけ行く価値が充分ある。
計画通り文殊院に降りたとしたら、西向きの谷の中だから視界が限られ、せいぜい白根三山を眺めた位となり、すぐ近くに稀な山岳展望地があることを知らずに終わっただろう。
(2) 甲斐大和から嵯峨塩鉱泉前まで利用したタクシーは、駅前に電話番号を記した看板が出ている。
勝沼観光タクシー: 0553-48-2522 および 0553-44-1432
(3) 甲斐大和駅から天目まで村営バスが運行されている。 運賃は均一で100円だが週日は一番早い便が9:48発のため利用しにくい。 駅前にいたバスのドライバーに聞いたところでは、土日は8時半過ぎに着くJR線列車と連絡する臨時便が運行されているという。
大和村役場企画観光課:東山梨郡大和村初鹿野1693-1 Tel: 0553-48-2111
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