西丹沢-大室山-鐘撞山-東野 (2000.3.25-26)
|
☆期日/山行形式: 山小屋利用 1泊2日 単独
☆地形図(2万5千分1): 中川(東京16号−3)、大室山(東京15号−4)、
青野原(東京15号−2)
☆山行のあらまし
昨秋から何度か出かけた結果、丹沢一般尾根ルートはあらかたトレースした形となった。 そろそろ
"横丁" を探検して歩く段階に入ったので、その手始めとして大室山から北東の方角に延びている尾根をトレースして見ようと考えた。 この尾根の中程には鐘撞山と言うピークがある。
登ると祟りがあるという言い伝えがあって以前は道がなかったのだそうだ。
西丹沢(540)から犬越路(1055)を経て大室山(1587.6)に登ったあと、尾根伝いに神ノ川ヒュッテ下降点(1230)、pk934を経て鐘撞山(900.2)の頂上を踏んだら神ノ川ヒュッテ(550)に降りて宿泊、二日目にふたたび鐘撞山に登り返し、pk669、pk507を経て神ノ川キャンプ場に下山。 林道を音久和(380)、上青根(430)から東野(400)まで歩いてバスに乗り、三ヶ木経由橋本へ。 さらに町田、長津田経由電車で帰ろうという計画を立てた。
この計画の問題点は、標高1200m 台の地点にある神ノ川ヒュッテ下降点から鐘撞山までの間で、昭文社の案内地図には "破線コース" ラインも引かれていない。
昨年の末、初めて神ノ川ヒュッテに泊った時に、大室山からこのルートを降りてきたパーティに遭った。 詳しいことは聞かなかったが薮は殆どなかったような話だったから単独でもそんなに時間が掛からずに歩き通せるだろうと予想した。
念のため管理人の山崎さんに電話をかけてルートの状況を確認した。 脚を骨折して自宅で療養中と言う事だったが、頂上から分岐点まで約1時間、分岐点から鐘撞山まで1時間足らずで歩けるだろうと言うことだった。
ウイークデイには新松田から西丹沢への早い時間のバスがない。 土曜日に入山する事にして、天気予報の動向を見守った。 春に三日の晴れなしと言う諺はあるが、うまい具合に週末を通じて好天に恵まれ、静かな山を楽しく歩く事が出来た。
|
|
蛭ヶ岳(左)から檜洞丸(右)
|
☆記録アルバム
3月25日
<タイムレコード>
宮崎台[5:29]=長津田=中央林間=相模大野=[7:06]新松田[7:17]=[8:25]西丹沢(8:40)-用木沢出合(9:00)-渡渉点(9:10/20)-コシツバ沢(10:00/05)-犬越路(10:30/40)-pk1221()-大室山肩()-大室山(12:40/13:10)-神ノ川ヒュッテ下降点(14:00)-pk934()-鐘撞山(14:5515:05)-神ノ川林道(15:40/50)-(16:10)神ノ川ヒュッテ
早朝家を出る。 雲ひとつなく晴れ上がった穏やかな朝だ。 寒気が南下している様だが、もう真冬の様な冷え込みはない。 お定まりのルートで新松田へ行く。 バス停には10人程の登山者が並んでいたが発車間際にさらに何人かがやって来てほぼ満席となって発車した。 客の一部は途中の大野山や不老山、畦ヶ丸などへの登山口で降りて行き、西丹沢へは半分位が行った。
ビジターセンターが停電になってポンプが動かず、蛇口から水が出ないばかりでなく、水洗トイレもダメになっていた。 身支度を整え、居合わせた五十台の男と連れ立って歩き出した。車道を歩きながらの四方山話で、今日は白石峠から加入道経由で大室山に登りに来たということや、最近蔵王と西吾妻に行って来たと言う話を聞く。 用木沢出合で男と別れ、谷道に入り、ふたつ目の堰堤を越した所にある徒渉点で水を汲む。 周りはまだ枯山水だが春の日差しが明るく、鳥が美しい声で鳴いている。
暫く右岸に沿って進むと木製テーブルがある。 この前休んだ所だが今日はそのまま通過し、杉林の中を登って尾根を乗っ越し、枝沢を渡って行った辺りから峠への登りが始まる。 東海自然歩道になっている故か、ちょっとしたザレ場を横断する所に
"転落事故頻発注意" と記した看板が掛けられている。 峠から降りて来る沢に入って暫く右岸を登った後、"コシツバ沢"
と記した道標を見てゴーロに入った所で小休止。
ここから一旦左岸を登った後でふたたび右岸に移ると峠は近い。 ひと登りして上の方を見ると潅木の隙間に小屋の青い屋根が見えていた。 10:30に犬越路に登り着いた。
木製テーブルのひとつで大型三脚を持った六十男が休んでいた。 隣のテーブルにザックを下ろす。 まわりを眺めながらレモンティーを飲んだり、チーズを食べたりしていると熟年夫婦が登って来た。 そのすぐ後から今度は熟年男五人組が登って来た。 いずれもバスでは見掛けなかったからマイカーで来たに違いない。 車で用木沢出合まで入ればここまで1時間あまりで登って来られる。 辺りの景色を写そうとデジカメを出したが起動しない。 なんと電池が入っていないではないか! 昨日、ニッケル水素電池を充電器にセットしたのだが、充電が済んだ電池を装填して来るのを忘れたのだ。 予備電池を使って切り抜けたがこれがなかったらお手上げになる所だった。 10:40に出発。
|
|
|
避難小屋の北側を通り抜けるとすぐに急登が始まる。 砂袋で補強されて、霜解けの泥濘がなく歩きやすい。 標高1168.6m
のピークに登り上げた後は眺めの良い緩やかな稜線になる。 両側は姫笹原で小楢の樹が散在している。 木の間越しの富士山が大きい。 犬越路からの大室山は、普通1時間半ほどで登れるとされているのだが、後半でペースが落ちて大分時間が掛かった。 薄雪に被われた稜線に到達して見たら
"肩の広場" で二十人を越すほどもの熟年登山者が休んでいた。 潅木の間を5分ほど歩くと三角点のある頂上広場に出た。
この山の頂上広場は回りを潅木が取り囲まいていて落ち付いた雰囲気がある事は好ましいのだが展望写真を撮るには向いていない。 潅木の隙間から檜洞丸や蛭ヶ岳が見えている。 どちらも予想以上に登り出があって苦戦したが、それぞれの思い出ができて親しみのあるピークになった。 野外テーブルで休んでいた五十男と話しながら林檎やチーズを食べる。 最近多い
"年寄り新人" のひとりで、車利用の日帰り山行専門だと言う。 これからどちらへ行くのかと聞かれて、「今日はこの山頂から北東の方向に伸びている尾根の途中にある鐘撞山まで行きます。 二日掛けて尾根の末端までトレースするために出掛けて来たんですよ」と答える。 「今夜は何処に泊るんですか」と聞くので、「この下の谷間に神ノ川ヒュッテという山小屋があるんですよ」と答えたら、「山小屋って食事や布団はあるんですか?」と聞く。 ビックリしたが何気なく「ええありますよ」と答えると、「それじゃ旅館みたいな物なんですか?」と言う。 ちょっと説明し切れない感じになったので「ええちょっと違いますけど、マァそんな物です」と言ういい加減な答えで話を切り上げる。 男が帰って行くと入れ違いに肩で見掛けた熟年パーティがやって来た。 熟女のひとりが「アレーッ、こんなに近かったんだぁ−」と喜んでいる。 頼まれて記念写真のシャッターを押してあげた。 ファインダーの中には幸せそうな顔が並んでいた。 カメラの持ち主に尋ねると、辻堂から17人でやって来たと言う。 この人達も間もなく下って行き、こちらもそろそろ荷物を纏めようかなと考えていた所へ四十台の夫婦がやって来てまたカメラのシャッターを頼まれる。 なかなかの美男美女で体格も良く、見栄えのするカップルだ。 頂上を去る前にここに来た証拠の写真を写そうとデジカメを出したら電池ボックスの蓋が開いて電池を雪の上に撒いてしまった。 慌てて拾って入れ直し、しっかり蓋をロックする。
|
|
|
青色のペイントを塗った藤野山岳会の杭を目印に下降ルートに入り、最初の目標地点である神ノ川ヒュッテへの分岐点を目指す。 急な斜面を踏跡よりは幾らかましと言った程度のルートが通っている。 潅木が密生してるので高度感はないが地形はかなり険しい。 凍結した古い雪が泥を被っているのも物騒だ。 潅木とストックとを手掛りにして慎重に下降して行く。 漸く傾斜が緩むと檜林の一角が伐採されて視界が広がっている所に出た。 檜洞丸、蛭ヶ岳、姫次、袖平山をつなぐ頂稜に囲まれた神ノ川源流地帯が一望のもとに見渡せる。
茅戸の中を通り抜けて檜林に入る所で踏跡が分かれている。 雪に被われていない右手の方が道形がハッキリしているのだがどうも方向が変で、神ノ川の方に降りてしまうような気がする。 分岐点を左に入って行く方は道形が雪に覆われて見え難いがそこここの樹木の枝に赤テープのコースサインが巻き付けてある。 暫くの間、檜林の下の雪の上をコースサインだけを頼りに下って行くと神ノ川ヒュッテへの下降点を示す粗末な道標が立っている所に着いた(下右)。
頂上を出発してから大分長く歩き続けているし、現在位置が確認できてひと安心もしたのでザックを下ろして10分ほど休憩する。 鐘撞山へ向かう踏跡の脇の木には、"ヒメサユリ山の会" と記した小さなプラスチック板の道標が打ち付けられ、要所の木の枝に赤や赤/黄のビニールテープによるコースサインが巻き付けてある。
|
|
|
歩き出して暫くは緩やかな下りが続いたが標高1200m あたりで檜林から潅木が密生した急斜面に入る。 傾斜が急過ぎて土壌が安定しないためか踏跡が殆ど分からなくなる。 コースサインが高密度に付けられているので迷うような事はないが、もしこれがなかったらとても下って行く気になれない様な所だ。 こんな所で滑落して骨折でもすれば命に関わる。 慎重に潅木から潅木へと渡りながら下り続けて行くが、脚より腕が疲れる。 やや右に曲がって尾根を乗り越すような感じで裏側の斜面に入ると幾分傾斜が緩んでふたたび踏跡が見えて来た。 さらにひと下りすると緩傾斜の尾根の背を行く明瞭な踏跡に乗る。 漸く緊張が解け、ホッとした気分になって進んで行くと次第に尾根が痩せて来る。 両側が崩れて狭くなったコルから登り返して行った先が鐘撞山の頂上だ。 檜林の中に入り、途中にやや急な登りがあるがすぐに傾斜が緩んで来てドラ焼の様な形に盛り上がった頂上に着く(14:55)。
木が伐られて切り開きになっているが、あまり人に踏まれていないようで薮っぽい。 何となく雑然とした雰囲気だが、鐘撞山と記した標柱、この山に纏わる歴史を記した看板、小さな石の祠、門型の丸太組があって山の大きさに似合わない道具立てだ。 丸太組は鐘でも吊るすためらしく、新しく立てられたばかりだ。 今日はもう登りはない。 神ノ川沿いの林道へ降りたら、2〜30分上流に向かって歩けば神ノ川ヒュッテだ。 木の根方に腰を下ろし、ホッとした気分になってバナナを食べたりジュースを飲んだりする。 大室山の方を見上げるといまし方降りて来た急斜面がそそり立っている。 15:05に出発。
10m ほど戻った所にある分岐点を左に入る。 すぐに踏跡は急な尾根をまっすぐ下る様になる。 梢越しに見下ろす神ノ川はすぐ下なのだが、疲れている脚で踏んばるのが辛い。 やがて杉林の中に入ると地形が緩んで急斜面ながらジグザグを描いて下る様になる。 尾根の真下は砂利の採取場でガタガタガタと機械が動く音が聞こえて来る。 次第に道形がはっきりして来ると右手に回り込んで沢沿いに下り着き、間もなく道路脇の駐車場に出た。 これで今日の山は終わった。 今日最後の休憩をする(15:40/50)。
|
|
|
|
神ノ川谷の両側の斜面の樹木は枝が微かに色付いて芽萌きの近い事を示している。 長者舎は今でもキャンプ場として使われている様だ小屋の建物は荒廃している。
昔、北丹沢の沢に何度か入った。 長い夜道を歩いて来てここを通り掛かるといかにも暖かそうな灯火が小屋から漏れていて、後ろ髪を引かれながら上流のビバークサイトへ歩き続けたのを思い出す。
少し先には山の神の祠がある。 かつてここに土地の長老の小屋があってこの辺りに入山する登山者達の面倒見をしていたと言う事が記されている。 16:10に神ノ川ヒュッテに着いた。 |
近くの駐車場に何台かの車が見えたので相客が居るのではないかと思ったが、小屋に居たのはオーナーの杉本さんと四十台の工事人だけだった。
工事人は、鐘撞山に吊るす鐘を運んで来ていた。 酸素ボンベを切断して作った物で明日頂上に運び上げるのだと言う。 本式の鐘があまり高価なのでその代用だと言って叩いて見せて呉れたが、見かけによらず澄んだ良い音がする。 スイスの知人から送ってもらった自家製ワインを出して鐘釣の祝儀にする。 風呂で汗を流してサッパリしたあと食事をする。 何時もの事だが、この小屋は気の利いた美味しい食事を手際よく作ってくれる。 全部はとても食べ切れないので、天ぷらには手を着けず、魚と野菜のフォイル焼き、煮物、漬け物などで軽く一杯のご飯を食べる。 オーナーはこの辺りの歴史に詳しく神ノ川から道志、秋山、藤野に掛けての様々な言い伝えを聞かせて呉れた。 8:30に就寝。 |
3月26日
<タイムレコード>
神ノ川ヒュッテ(7:40)-井戸沢出合(8:00)-小休止(8:35/40)-鐘撞山(9:10/25)-折花橋下降点(9:45)-神ノ川谷展望点(10:00/05)-月夜野キャンプ場分岐点(10:20)-神ノ川釣り場&キャンプ場(10:35/50)-音久和-上青根-(12:15)東野[13:13]=[14:11]三ヶ木[14:15]=[15:10]橋本=長津田=宮崎台
熟睡したが、明け方は冷え込んで目が覚め、布団の上に毛布を一枚掛けた。 六時前に目が覚め、小屋の外に出て見る。 今日も天気が良さそうで雲はひとつも見えない。 鐘吊り隊の出発は9時だと言うので見物を諦め7:40に出発する。
昨日の道を鐘撞山入り口まで戻り、沢沿いから杉林に入り、ひと登りした所で休憩。 日曜日で谷底の砂利採取場も休みとなり山全体が静まり返っている。 杉林から枯茅と唐松の間の急登に掛かると左手に檜洞丸からの稜線が望まれる様になる。 右下には青根あたりの集落も見下ろせる。 やがて急登が緩み、平坦になって来ると鐘撞山の頂上だ。 殺風景な頂上だが樹林に囲まれて静かなのが良い。
小休止のあと昨日の続きのルートに入る。 踏跡は薄いが要所にコースサインがあるので迷うような事はない。 折花橋への下降点を示す道標を通過すると幾らか踏跡が明瞭になる。 尾根が狭まった所に杉林の切れ目があって神ノ川源流地帯が見渡せる。 道端の茅を折って視界を広げ、645版とデジカメとで写真を写した(下左)。
二つ三つのコブがあるが、捲道になっていたりして急な登りはなく、難なく進んで行ける。 高度が下がるにつれて笹が深くなって来た。 月夜野キャンプ場へのルートを左に分けて進んで行くと道が右に折れ曲がり、ひと下りで河原に降り立った。
大石で川が区画されてプールを連らねた様になっていて、それぞれで釣り人が糸を垂れている。 釣りの邪魔をせぬよう一番下手の石並び伝いに徒渉する。 バンガローの並びと流れの間の河原のテーブル石にザックを下ろす(下右)。
チーズクラッカーと一緒に食べる林檎が美味しい。 釣り人達の成果はもうひとつの様だ。 まだ寒いせいなのか、今頃は魚の食事タイムではないのか?
|
|
|
|
林道に上がってすぐの所で袖平山へのルートの入り口があるジジィー神社を確認して東野に向う。 この前通った時には工事をしていた所が立派な舗装道路になっていた。 音久和の手前から振り返った大室山の姿が良い。
|
曲がり角をひとつ早まって手前の上野田で車道に降りてしまったが、途中の台地の上から望む北丹沢の山々も奇麗だった。 12:15に東野バス停に着く。 12:22の三ヶ木行きがあるが慌てて帰る理由もないので、道端の食堂に入る。 田舎の店だが隣の旅館の経営で、メニューは豊富だ。 肉鍋定食を頼んだら冷や奴やオシンコの付いたボリュームたっぷりのセットが出て来た。 ご飯を少し残した以外は全部平らげて腹一杯以上になった。 食べた物に押し出されて大キジを催したので旅館のトイレを借りて腹を軽くする。 月夜野から来た13:31のバスに乗る。 空車だったが蛭ヶ岳から降りて来たと思われる熟年登山者と二共に乗り込んだ。 春先の日曜日で天気も良かったせいか、西野野や焼山登山口で何人もが乗り込んできてほぼ満席になった。
14:11に三ヶ木に到着。 橋本行きに乗り継いで長津田駅経由で帰った。
|
|
|
|
|
|
|